「何故……見抜いたの? ……あたしのまやかしの術を……」
焼け膨れた瞼が、ニノへ一心に向けられた。恐らく視力を失っている……だが、問わずにはいられないと、睨みを効かせる。
その様を、薄い笑みで返してやった。
「投げキッス。あれを受けた奴へ見た目を変換させてんだろ。オレん時と同じくな」
それ故にリョウの攻撃が跳ね返ったのが何よりの証拠だと、得意げに鼻を鳴らす。 ニノの見解に、オキカメマラが噴き出したが、一頻り笑った後、その顔は次第に脱力で伏せられた。完敗、といった具合だ。
「ふ、ふふっ。……その通りだけど、普通の人間なら、仲間の姿をしてる者には躊躇うはずだわ。……化け物なだけあるわね」
負け惜しみに呻くオキカメマラの首へ、斧の刃が当てがえられた。何度となく弟を愚弄された、ガイラスの憤りは凄まじい。
「化け物は貴様だろうがっ!」
「あらあら。やっぱり、知らないのかしらね……天人は……人げ……ぐふぅっ!!」
何かを言い掛けたが、そこで事切れた。
針の如く集結させられた魔力。閃熱の弾が心臓を貫いたのである。唱えたニノに表情は無く、敵の死も確認せず身を翻した。
「ニノ……?」
様子が変だ、と。……窺うライを手で払い退け、顔を隠すようフードを深く被る。
「下らねぇお喋り訊いてる暇、無いない」
口調だけは、いつもの軽さ。フイッ、と足を進め、リョウの傍らへひざまづいた。 |