「不思議でしょ? 何故かしらねぇ」
顔を近付け囁くと、体に手を這わせてくる。背に触れた爪が、傷口へ食い込んだ。 苦痛に歪んでも美しさが失われない顔立ちを、オキカメマラが愛おしく見つめる。
それを振り払おうと咄嗟に拳を浴びせたが……傷を負ったのはリョウの方だった。
「き、貴様……ま、さか」
確信を得た呻き。だが再三に渡る深手により、遂に限界が訪れたのか意識を失う。
「リョウ……い、嫌だ」
瞼を閉じたリョウの姿を見て、ライが激しい動揺を露わとした。仲間を傷付けられた怒り――それよりも、失う“恐怖”だ。
震える手で、剣を構えたが……。
「駄目だ、ライ!」
それを止めたニノ。行かせまいと強引にライのマントを掴み、手繰り寄せている。
「離せ! リョウを……助け……っ!」
「落ち着け!」
……思いっきりだ。
突然、頬を叩かれ、ライの目が見開かれた。叩いたニノが「悪ぃ」と小声で一言。 呆然としているライを、ガイラスに押し付けると、杖で肩を叩きながら項垂れた。 |