小説(雷霆) | ナノ
ロマリアの死闘(18/31)
 
 オキカメマラが手を伸ばした先。リョウは深傷が災いして、躱せず捉えられてしまう。片腕で抱え上げたリョウを、自分の胸へと引き寄せると、甲高い奇声を上げた。

「貴方、何度見ても本当に美しいわ。あたしの全てを捧げてもいいくらいよ!」

 不気味な台詞と、それ以上に不気味な投げキッスを飛ばし、恍惚な顔で見つめてきた。これにはリョウとて一溜まりも無い。

 声も出せない程のドン引きだ。

 逃れらねば、生命の危機より貞操が危険に晒されるのは明らか。それも最悪かつ受け入れ難い形で。文字通り必死、リョウの抵抗は正に死に物狂いである。身を捩り、拘束から遂に抜け出すと、オキカメマラの腕へ、満身の力を込めた拳を打ち付けた。

「くっ、何故だ……っ!?」

 我が目を疑い、敵を仰いだ。

 真っ向からの攻撃に堪えた……いや、正確には利いてない。以前と同様に、ダメージが通らない現象が起こっているようだ。

 更なる不可解な現象が起きている事に、リョウが呻きを抑えながら目を走らせる。

 己の腕に、全くの力が入らないと……。

 リョウの腕は、尋常では有り得ない方へ曲がり、裂けた皮膚から血が滴っていた。
 


×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -