オキカメマラが手を伸ばした先。リョウは深傷が災いして、躱せず捉えられてしまう。片腕で抱え上げたリョウを、自分の胸へと引き寄せると、甲高い奇声を上げた。
「貴方、何度見ても本当に美しいわ。あたしの全てを捧げてもいいくらいよ!」
不気味な台詞と、それ以上に不気味な投げキッスを飛ばし、恍惚な顔で見つめてきた。これにはリョウとて一溜まりも無い。
声も出せない程のドン引きだ。
逃れらねば、生命の危機より貞操が危険に晒されるのは明らか。それも最悪かつ受け入れ難い形で。文字通り必死、リョウの抵抗は正に死に物狂いである。身を捩り、拘束から遂に抜け出すと、オキカメマラの腕へ、満身の力を込めた拳を打ち付けた。
「くっ、何故だ……っ!?」
我が目を疑い、敵を仰いだ。
真っ向からの攻撃に堪えた……いや、正確には利いてない。以前と同様に、ダメージが通らない現象が起こっているようだ。
更なる不可解な現象が起きている事に、リョウが呻きを抑えながら目を走らせる。
己の腕に、全くの力が入らないと……。
リョウの腕は、尋常では有り得ない方へ曲がり、裂けた皮膚から血が滴っていた。 |