掲げた杖を軸に瓦斯の臭いが充満してゆくと、ニノがお決まりの得意顔を見せた。
「イオラーーーーッ!!」
唱えに応じて、起こる爆発。辺り一帯を揺るがし、地面を左右に大きく歪ませる。 立っている事も儘ならない激しい揺れにライがよろめくと、ニノがそれを支えた。
「お、お前、こんな凄い呪文、いつの間に覚えたんだよ」
「まっ、オレ様、天才だしね。つか、あんなクソオカマにビビること、無いない!」
「怖く……ないの? あの時、一番の被害を受けたの、ニノなんだよ!?」
「そうらしいねぇ。けどよ、助かったんだし、過去にビクビクしても意味なくね?」
“まやかしの術”により、死に掛けたというのに、憎たらしいくらい余裕綽々だ。
「いらぬ杞憂だったようだな。大した奴だよ、君って男は」
「あんたに誉められてもキモいっての!」
「ったく、素直じゃねぇな。お前ぇはよ」
いつもなら腹も立つ憎まれ口だが、それが仲間達の不安を払拭させたようである。 ニノの余裕を見たのが功を成したのか、皆それぞれが、普段の調子を取り戻した。 |