小説(雷霆) | ナノ
ロマリアの死闘(9/31)
 
 掲げた杖を軸に瓦斯の臭いが充満してゆくと、ニノがお決まりの得意顔を見せた。

「イオラーーーーッ!!」

 唱えに応じて、起こる爆発。辺り一帯を揺るがし、地面を左右に大きく歪ませる。
 立っている事も儘ならない激しい揺れにライがよろめくと、ニノがそれを支えた。

「お、お前、こんな凄い呪文、いつの間に覚えたんだよ」

「まっ、オレ様、天才だしね。つか、あんなクソオカマにビビること、無いない!」

「怖く……ないの? あの時、一番の被害を受けたの、ニノなんだよ!?」

「そうらしいねぇ。けどよ、助かったんだし、過去にビクビクしても意味なくね?」

 “まやかしの術”により、死に掛けたというのに、憎たらしいくらい余裕綽々だ。

「いらぬ杞憂だったようだな。大した奴だよ、君って男は」

「あんたに誉められてもキモいっての!」

「ったく、素直じゃねぇな。お前ぇはよ」

 いつもなら腹も立つ憎まれ口だが、それが仲間達の不安を払拭させたようである。
 ニノの余裕を見たのが功を成したのか、皆それぞれが、普段の調子を取り戻した。
 


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