小説(雷霆) | ナノ
ロマリアの死闘(8/31)
 
 ――城門前の石畳は、松明の明かりを反射させ鏡のようになっている。踏めば、足下で割れた。そう、凍り付いているのだ。

 倒れている兵士の鎧にも白い霜が立っている。恐らく氷結呪文を受けたのだろう。

 被害は甚大だ。躊躇している暇は無い。

「オキカメマラ!」

 ライの呼び掛けに、オキカメマラが待ちかまえたように振り向く。顔に笑みを湛えながら、頭に生えた百足を蠢かせている。

 再び、ライの胸へ恐怖が蘇ってきた。

 勝算は無いに等しい。だが、これ以上の犠牲を出させる訳にはいかない、と……。
 残った兵士らに「ここは僕達に任せろ」と、撤退を指示し敵の前へと踏み出した。

「自ら出てきてくれて助かったわ。この国の壊滅は、任命に入ってないの。もう少し遅ければ、やり過ぎてしまう所だったわ」

 耳障りな笑い声を響かせた後、一行の顔を一人一人確認してゆく。詰まらなそうな溜め息を吐いて、長い爪を口元に添える。

「誰も死んでないとは驚いたわね。命根性が汚いのかしら」

 前回の戦いを思い出したのだろうか。

 まやかしの術の恐怖。またあれを使われては適わない。そう思い、皆が躊躇う中。

「ベラベラと煩ぇな! 汚ぇオカマに、汚ぇ呼ばわりされる筋合いはねぇんだよ!」

 ……と、ニノが怒鳴り声を上げた。
 


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