「あれは!」
外の異変へ馳せられたライの目。
城門付近に、幾つもの松明が揺らいでいるのが確認できた。兵士達が武器を手に取り囲んでいる、その中心にいるのは魔物。
それを捉えたライの瞳が揺れた。身体に刻まれた恐怖が、まざまざと蘇ってくる。
半人半鳥の魔物――オキカメマラだ。
「あいつ、僕達を追ってきたのか!」
手強い敵だ。事実、あれの所為で全滅へと追い込まれたのだ……と。そう思った瞬間、当に癒えた筈の腹が痛んだ気がした。
(怖い……。だけど!)
膝から崩れそうな震えを、辛うじて堪えると、壁に立て掛けられた剣を手に取る。
“勇者として行うべきことは、一つ”
据えられた鏡に映るのは、父の形見である蒼き宝玉の額飾りを填めた、自分の姿。
蒼い輝きが、微かな勇気を湧かせた。
覚悟を決めたのだろう。紫のマントを羽織り武具を整えて、顎を窓の方へ向ける。
……僕には、仲間達がいるから。
“勇気”を確かなものとする為、そう唱えながら仲間の部屋へと向かうのだった。 |