「お前も来るの? 珍しいね」
無意識に、声色は低音へ変わる。邪魔立てをする気でいるのを気付いたのだろう。
ライの不満も意に介さず、鼻で笑った。
「いいよな、別に」
「ああ、異論無いが……では、行こうか」
リョウも、ニノの動向を怪訝に感じたらしいが、敢えて突っ込まず歩みを進めた。
軽業師の催しを楽しんだ後は町巡りだ。
さすが王都というだけある。ロマリア城下町の栄えは、アリアハンの比ではない。 他国との交流がある為、其処彼処にある店は、ライが見た事の無い物が立ち並ぶ。
「ライ、どれか欲しい物があったら……」
「おっ、これ笑えね?」
(さっきから、なんだよ。こいつは……)
喉元まで出た言葉を、グッと堪えた。顔を赤くするライ、一方のニノは訳の分からない玩具を突きつけ、せせら笑っている。
何度目か、数えるのも馬鹿らしい。
……リョウがライの側へと近付こうとすれば、ニノが必ずそれを断ちにくるのだ。
(あーもう、なんかムシャクシャする!)
当然ライが存分に楽しめなかったのは、言う迄も無い。……また、リョウがニノの意図を知る由無いのも言う迄も無かった。
宿屋へ戻る頃には、ライの気疲れもピーク。グッタリと、長椅子へ身体を沈めた。 |