……そんな経緯で今に至る。
「つか、あんたは何時まで膨れてんだよ」
「まさか勇者を王にさせやしねぇよ。ちょっとばかり、からかっただけじゃねぇか」
口々に言うガイラスとニノを一瞥して、唇をツンと尖らせ余所を向く。こういう時の子供っぽさには手を焼く、というもの。
不意に、リョウがライの手を引いた。
「ライ、広場の方で何かやっているようだよ。見に行くだろ?」
「そんな気分じゃ……」
そう、言いながらも目は広場へ向く。見れば軽業師が興行をしているではないか。 サーカスだろうか、そんな愉快なモノを好奇心の強いライが見過ごせる筈は無い。
「この前は、町を巡れなかっただろ。今日のところは、ゆっくりと見物しような?」
「えっ、うん。でも、いいの?」
「構わないさ、たまの休みは必要だ」
リョウの提案に、ライの頬が上気してゆく。先程までの怒りは忽ち収まり燥いでいる。扱い易いといおうか、かなり単純だ。
「早く早く、見に行こうよっ」
「ああ。君らも好きにしていいぞ」
その言葉を聞いて、ガイラスが“待ってました”と、直ぐさま酒場へ足を向ける。
ニノの方は、といえば……ライと腕を組むリョウを見るなり、舌打ち一つ。フードを目深に被ると、唐突に間を割ってきた。 |