「へ、陛下。お気持ちだけは有り難くお受け致しますが、わたくしには討伐の……」
「いや、皆まで言うな。私が務まるのだから、そなたはもっと容易いであろう!」
ライの拒絶は、完全無視。おまけに、金の冠を被せようとしてくるから堪らない。 後込みするライを、王が満面の笑みで追う。……コントか、喜劇といった騒ぎだ。
嬉々とする王に追い詰められたその時。
「いい加減にせぬか、馬鹿息子が!」
王の頭が地面に沈む。怒鳴りと共に加えられた一撃、放ったのは老人。肩で息をしながら、王の頭を杖でめった打ちにした。
(助かったけど……息子ってことは、このおじいちゃんが先代の王様?)
現れるなり、老人とは思えない豪快さを見せつけられて、ライの目が白黒とする。
ライの視線に気付いたのだろう。老人の首元まで伸びた髭がふさふさと揺れ動く。
笑いながら、ライへ手を差し伸べた。
「旅人よ、迷惑掛けたな。こやつは、王になっても一向に遊び癖が抜けぬのじゃよ」
そう言い“最後の制裁”と、ばかりに王の尻を蹴り上げる先王。先王の力技により漸くこの騒動も終わりを見せたのだった。 |