小説(雷霆) | ナノ
魔物遣いの少女(40/41)
 
 アリシアの方は元来の素直さ故か、握ったライの手を離す事なく力を込めている。
 考え倦ねたような間の後、漸く顔を上げたアリシア。無理に笑顔を作って見せた。

「うん、そ……だね。私には村での仕事があるし、ライにも使命があるんだもんね」

「使命、か」

 魔王討伐の使命。もし魔王を倒せたのならアリシアの魔物達はどうなるのか……。

 変わらないのか、それとも消えるのか。

 ふと、浮かんだ疑問の答えを、ライが知るはずなど無い。“分からないが”と、思いながら、ライの顔が苦悶に歪められる。

「頑張って……ね」

 “魔物遣い”の彼女が、その事に気付いてない訳がない。なのに、浮かべられた健気な笑顔に、ライは胸が締め付けられた。

(僕が成すことが、アリシアの友達を、奪う結果になるかもしれないのに……)

 ライの心情を、気付いたのだろうか。慌てたように、アリシアが手を引き寄せる。

「やだっ、そんな顔しないで! 私ね、湿っぽいのって苦手なんだ。だから、ねっ」

 両の口角に指を当てながら、クイッと上へ押し上げて、“笑顔を”と……促した。
 


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