アリシアの方は元来の素直さ故か、握ったライの手を離す事なく力を込めている。 考え倦ねたような間の後、漸く顔を上げたアリシア。無理に笑顔を作って見せた。
「うん、そ……だね。私には村での仕事があるし、ライにも使命があるんだもんね」
「使命、か」
魔王討伐の使命。もし魔王を倒せたのならアリシアの魔物達はどうなるのか……。
変わらないのか、それとも消えるのか。
ふと、浮かんだ疑問の答えを、ライが知るはずなど無い。“分からないが”と、思いながら、ライの顔が苦悶に歪められる。
「頑張って……ね」
“魔物遣い”の彼女が、その事に気付いてない訳がない。なのに、浮かべられた健気な笑顔に、ライは胸が締め付けられた。
(僕が成すことが、アリシアの友達を、奪う結果になるかもしれないのに……)
ライの心情を、気付いたのだろうか。慌てたように、アリシアが手を引き寄せる。
「やだっ、そんな顔しないで! 私ね、湿っぽいのって苦手なんだ。だから、ねっ」
両の口角に指を当てながら、クイッと上へ押し上げて、“笑顔を”と……促した。 |