――カザーブ村へ戻った頃は、もう昼過ぎだ。休憩の時間なのだろうか、腰を下ろし、話し込む農民達の頭上へ影が射した。
影の主は巨大な怪鳥、ガルーダ。カザーブの人々には見慣れた鳥だが、今日は何時もと違う。嘴に、半裸の男を銜えている。
驚嘆する村人を箸にも掛けず、“ルー”という名のガルーダは、カンダタの搬送の為、ロマリア方向へと飛び去っていった。
「早急に、陛下へお知らせしなきゃね」
取り戻した“金の冠”を道具袋へ仕舞うと、立ち尽くすアリシアに笑顔を見せた。
「ライ、もう行っちゃうんだね?」
「アリシア、ごめんね。僕も、アリシアと一緒に居たい。……だけど」
どちらともなく、アリシアの家へと目を向ければ、魔物達が愉しげに遊んでいる。
……ライの言葉に偽りは無い。
出会いから僅かな時間だが、初めて出来た友達との別れは、ライの心へ身が引き裂かれるくらい辛く悲しい思いを湧かせた。
「アリシアは村に必要不可欠な人だ。僕の我が儘で附いて来てなんて言えない……」
喉元まで出掛かった、本心をひた隠した分別のある素振り。それが精一杯だった。 |