小説(雷霆) | ナノ
魔物遣いの少女(37/41)
 
「そう、二度も三度もやられて堪るか!」

「きゃあっ! 触らないでっ」

「アリシア!」

 予期せぬ行動を見せたカンダタ。駆けつけようとする、ライの足が踏み留まった。

 適わぬと思ったのか、カンダタはアリシアを人質に取ったのだ。彼女を腕に抱えると、牽制とばかりに首へ斧を当てがえる。

「こいつを殺されたかなかったら、お前らは、そこで大人しくしてなぁ!」

 脅し文句と共に、天井から下がる紐を引く。それが、仕掛けの種だったのだろう。

 カンダタの足元に落とし穴が開かれた。

「あ・ば・よ!」

 勝ち誇った声で吐き捨てたカンダタ。アリシアを抱えたまま、穴へとダイブした。

 急いで穴に走り寄ったが、一足遅い。

 階下が望めるだけ。逃げ足だけは相変わらず早く、既にカンダタの姿は無かった。

「た、大変だ。追わなきゃ!」

 穴に飛び込もうとした、そのライの前へ立ち塞がるニノ。焦るライとは対照的に、至って冷静な顔つきだ。ライの両肩を軽く叩きながら“まあまあ”と、宥めてくる。

「なんだよ、アリシアが危ないんだぞ!」

「や、どうだかな。この場合、危ねぇのはカンダタの方だろ」

 耳穴をほじりながら、なんとも暢気な口調でせせら笑う。ニノの落ち着きに、ライが憤りを露わにして、押し退けたと同時。

 ……階下から、悲鳴が聞こえてきた。
 


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