「そう、二度も三度もやられて堪るか!」
「きゃあっ! 触らないでっ」
「アリシア!」
予期せぬ行動を見せたカンダタ。駆けつけようとする、ライの足が踏み留まった。
適わぬと思ったのか、カンダタはアリシアを人質に取ったのだ。彼女を腕に抱えると、牽制とばかりに首へ斧を当てがえる。
「こいつを殺されたかなかったら、お前らは、そこで大人しくしてなぁ!」
脅し文句と共に、天井から下がる紐を引く。それが、仕掛けの種だったのだろう。
カンダタの足元に落とし穴が開かれた。
「あ・ば・よ!」
勝ち誇った声で吐き捨てたカンダタ。アリシアを抱えたまま、穴へとダイブした。
急いで穴に走り寄ったが、一足遅い。
階下が望めるだけ。逃げ足だけは相変わらず早く、既にカンダタの姿は無かった。
「た、大変だ。追わなきゃ!」
穴に飛び込もうとした、そのライの前へ立ち塞がるニノ。焦るライとは対照的に、至って冷静な顔つきだ。ライの両肩を軽く叩きながら“まあまあ”と、宥めてくる。
「なんだよ、アリシアが危ないんだぞ!」
「や、どうだかな。この場合、危ねぇのはカンダタの方だろ」
耳穴をほじりながら、なんとも暢気な口調でせせら笑う。ニノの落ち着きに、ライが憤りを露わにして、押し退けたと同時。
……階下から、悲鳴が聞こえてきた。 |