小説(雷霆) | ナノ
魔物遣いの少女(36/41)
 
「相変わらず、哀れになるくれぇ弱っちぃな。捕まった方が身のためじゃね?」

「だ、黙れ! 誇り高きカンダタ盗賊団、このままじゃ終わらねぇぜっ」

 大斧を振り回し、ポーズを決めた。意気込みだけは買うが、逐一ウザいと言える。

「へーっ、誇り高いのに女の子のお風呂覗いたりしちゃうんだー」

「自惚れるな! あれは、お前の魔物から逃げた先に、偶然風呂があっただけだ!」

 アリシアの皮肉を込めた言葉に、カンダタは大斧を向けながら、頭を上下させる。
 舐めるような視線、とでもいおうか。一頻り、下劣な馬鹿笑いを立てた後で……。

「魔物女は巨乳だとか、小僧が実は女で色が綺麗だったとか興味はないんだぜい!」

 ……と、またもや斧を振り回した。

「しっかり見てんじゃない」

「色……。どこがか詳しく訊きてえなっ」

「な、何を言ってるんだ、貴様はーー!」

 湯気が立つ勢いで、ライの顔が忽ち真っ赤になる。カンダタが、ライ達の入浴を如何に“じっくり”と見ていたかは明白だ。

 剣を構え猪突のように振り払ったが、腐っても盗賊。巨漢だが、なかなか素早い。
 ライの剣を躱しながら着いた先。アリシアに目を止めると、突如逃げ足を緩めた。
 


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