「あの王様。少し、おかしいよな」
「それをいいなさんなって。……ところでよぉ、リョウとライは何処にいるんだ?」
「リョウなら……あっち」
ニノの顔には“不愉快”の文字がしっかりと刻まれている。スッと顎先で指した一角。貴公子姿のリョウを取り巻いているのは、蝶よ花よと見紛う大勢の貴婦人達だ。
「おっ、随分とモテてるじゃねぇか!」
頻りに感心を示すのは、ガイラス。
確かに、リョウは長身な上に極上の美形である。女性の関心を惹くに十分なのだ。
モテるのも当然、と頷いている。
「……あんなの顔だけじゃね?」
「僻むんじゃねぇ。素材の差っうやつだ」
「はっ! 魔物シメる時のおっかねぇ面をよ、女の子ちゃん達に見せてやりてぇぜ」
不機嫌も最高潮のニノ。ペッと、唾を吐き捨てると、詰まらなそうに壁に凭れた。 何の気なしに顔を背けた先。丁度、その時、人並みが、沸き上がった事に気付く。
「なんかあったか?」
ホールの入り口。どうやら、たった今、訪れた者が騒ぎを起こさせているようだ。 |