――華々しい仮面で顔を覆う者、物語の主人公が着る衣装を模した装いをする者。 急遽、決められたにも関わらず、ダンスホールには続々と扮装した者が到着した。
時は夕刻、大勢の貴族達で溢れかえり、後は、王からの挨拶を待つばかりだった。
程無くして、二階の貴賓席へ現れた王。
勿論、扮装をしていたが……どういうわけだか露出も激しいバニースーツである。
「今宵は急と雖も、お集まり頂き嬉しく思う。どうか思う存分楽しんで頂きたい!」
……斯くして、国王の挨拶を皮切りに、目にも可笑しい仮装舞踏会が幕を上げた。
「仮装には違いねぇけど……外してね?」
暫くの沈黙後、然も小馬鹿にした顔付きで、ニノがガイラスの恰好を眺めている。
「なんでぃ、可愛いだろうが」
「や、魔物にしか見えねぇよ!」
ニノの反応も無理はない。リアルに表現された毛並み、ピンク色の耳。何故か顔の部分だけ、くり抜かれた猫の着ぐるみだ。 むくつけき男のガイラスが着た事により“不気味な生き物の出来上がり”である。
「……お前ぇの恰好もどうかと思うぜ」
「あ? 衣装係の女が選んだんだ。オレにケチつけられてもねぇ」
不貞腐れているニノの恰好は、盗賊神のコスプレだ。一枚布を巻き付けた衣装は不道徳の極み。誂えたように似合っている。
因みに、これらの衣装は国王の私物らしい。変わり者というか、趣味が悪過ぎだ。 |