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貴婦人と盗賊団(5/31)
 
 ――華々しい仮面で顔を覆う者、物語の主人公が着る衣装を模した装いをする者。
 急遽、決められたにも関わらず、ダンスホールには続々と扮装した者が到着した。

 時は夕刻、大勢の貴族達で溢れかえり、後は、王からの挨拶を待つばかりだった。

 程無くして、二階の貴賓席へ現れた王。

 勿論、扮装をしていたが……どういうわけだか露出も激しいバニースーツである。

「今宵は急と雖も、お集まり頂き嬉しく思う。どうか思う存分楽しんで頂きたい!」

 ……斯くして、国王の挨拶を皮切りに、目にも可笑しい仮装舞踏会が幕を上げた。


「仮装には違いねぇけど……外してね?」

 暫くの沈黙後、然も小馬鹿にした顔付きで、ニノがガイラスの恰好を眺めている。

「なんでぃ、可愛いだろうが」

「や、魔物にしか見えねぇよ!」

 ニノの反応も無理はない。リアルに表現された毛並み、ピンク色の耳。何故か顔の部分だけ、くり抜かれた猫の着ぐるみだ。
 むくつけき男のガイラスが着た事により“不気味な生き物の出来上がり”である。

「……お前ぇの恰好もどうかと思うぜ」

「あ? 衣装係の女が選んだんだ。オレにケチつけられてもねぇ」

 不貞腐れているニノの恰好は、盗賊神のコスプレだ。一枚布を巻き付けた衣装は不道徳の極み。誂えたように似合っている。

 因みに、これらの衣装は国王の私物らしい。変わり者というか、趣味が悪過ぎだ。
 


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