魔王の刺客に狙われていると。そう思い至り、意を決めて伏せていた頭を上げた。
「歓迎を有り難く存じますが、わたくし共の目的を公言すれば、人民の不安を煽る結果となります。目立った行動は避け……」
「ああ、善哉、善哉。そなたが、そうくると思っていたから、唯の舞踏会にはせん」
またも、言葉を遮って思案したように、目を傾ける。ニッと、口元が綻んでゆく。
「仮装舞踏会というのはどうだ!」
「か、仮装舞踏会!?」
……思わず、四人同時にハモった。
「それならば勇者と知られずに済むであろう。仲間同士でも仮装は見てのお楽しみにすれば、最高に愉快な舞踏会になるぞ!」
唖然とする一行を余所に、燥ぐ王。
王の周りにいる重臣の表情は、何処となく“やれやれ”と、でも言うような顔だ。
更に、態とらしい溜め息を吐く者さえいる。どうやら、王の奇行に慣れていると見て間違えない。誰一人として異論を唱える事は無く、迅速に準備に取りかかる始末。
「勝手に話が進んでるんですけど?」
「俺は派手な事は避けたいんだが、な」
「いやいや、面白そうじゃねぇか」
「ふぅん。仮装……ねぇ」
内輪でヒソヒソと話す振る舞いを、王は気にも止めず“名案だ”と、頷いている。
相手は“苟も”国王陛下。断れず仮装舞踏会の参加を余儀なくされる事となった。 |