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闇を纏う影(20/25)
 
「その額飾りが何よりの証拠だ。勇者のガキを殺れば、おれ様の株も上がるぜ!」

 アゾナンゴビーは喉をドクッと波打たせ頬を膨らます。首を振り回しながら、口内に溜め込んだ息を、一気に吐き散らした。

 濁った緑色が、辺り一面を染めてゆく。

 この、沼臭い息は皮膚から吸収される毒素を含んでいる。……即ち“毒の息”だ。

「厄介な能力を。兎に角、触れるなよ」

 リョウに従い、一同に端まで下がるが、なにぶん狭いフロアだ。壁側まで逃れたにも関わらず、悪臭が鼻腔を刺激してくる。
 幸いに、連続して吐く事は出来ないようだ。汚された空気は次第に晴れていった。

「あっ……アゾナンゴビーが!!」

 ……澄んでゆく視界。

 その中に姿が見えたのは、先程とは全く違う。体が蛇のような骸骨になっている。

 しかし、頭部だけは木乃伊のままだ。

 より一層の気味悪さを増させたアゾナンゴビー。動作の度に骨が不快な音を鳴り響かせる。床を這い、一行へ向かってきた。
 


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