小説(雷霆) | ナノ
闇を纏う影(19/25)
 
「しかし、派手な登場のわりにゃ呆気ないじゃねぇか」

 身を裂かれて痙攣しているアゾナンゴビー。余りの手応え無さに、ガイラスは物足りないようなことを言いながら近寄った。

「死んじゃ、いねぇみたいだな」

 点検してるガイラスの横から、ニノも共に覗き込む。明らかに、瀕死に見えたが。

「離れろーーーー!!」

 ……と、ニノは叫びを上げた。

 声に驚き呆けたガイラスを突き飛ばしたニノが、身を守るかのように杖を掲げた。
 分かれた部分から泡が立ち腐臭は更に増してゆく。ゆっくりと上げられたアゾナンゴビーの顔は、何故か満足そうに見える。

「おれ様も間抜けよ。貴様等が何者か考えれば直ぐに分かったのになぁ」

 百八十度の回転した首が、ライの方に向くとグラリッと垂れ下がり回転を止めた。

「封印を解ける奴っていえば、勇者に他ならねえよなぁ。……なぁ、小僧?」

「……僕は」

 不自然な曲がり方に怯えを示したライ。

 アゾナンゴビーは、それを見逃さなかったようだ。愉快そうに歯を鳴らしている。
 


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