小説(雷霆) | ナノ
闇を纏う影(18/25)
 
「人間てのは脆い……!?」

 言い掛けた、その眼前に突如として広がったのはリョウの姿だ。疾風を宿らせた蹴りは避ける余地を許さず、真っ向から衝撃を受けた頭が、後ろへ大きく仰け反った。

「畜生、仲間がいやがったのを忘れ……」

 有り得ない方に曲がった頭を、戻そうと揺らしている。文句も中途、今度は突然に半身を失う。ガイラスの剛腕を一身に込めた長斧が、胴を二股に分かれさせたのだ。

「二人共、大丈夫か!?」

 リョウの腕に支えられ、ライの目が弱々しく開く。まだ、朦朧としているのか、譫言のように「平気だ」と繰り返している。

 一方、ニノの元へ来たのはガイラスだ。

「お前ぇは、いつまで寝てやがんだよ!」

「つか……オレ、怪我人なんだけどよ」

「なんでぇ、起こしてやってるだろうが」

 優しい腕など一切与えられず、代わりに子猫のように首根を掴み上げられたニノ。
 これでもガイラス曰く、介抱した部類に入るのだから、ニノの嘆きは尤もである。

 手荒い兄を睨み、ガックリと項垂れた。
 


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