微動としないライの目線、先には骨がある。それに気付いたアゾナンゴビーの口端が嫌らしい具合に、ニィと持ち上がった。
「生に執着して黄泉にも逝けねぇ亡霊の嘆きってのはな、魔王様の大好物なんでね」
「貴様、魔王の手下……か!」
「おれ様の管轄なんだ、この場所はな。 悪いが、テメェらには死んでもらうぜ」
「はっ、そりゃこっちの台詞だっての!」
前に進み出たニノに、アゾナンゴビーの眼窩が向けられ、奥が怪しい光を持った。
まじまじと眺める時と同様に、上下に移動を繰り返していた光。それが、ニノの顔と垂直で止まった。暫く思案したように黙っていたが、再び、嫌らしい笑みを一つ。
「ほぅ、胸糞悪い目ぇだな……テメェみてえな、勘が良いガキは仕置きだぜぇ!!」
臭気を吐き散らし、怒鳴った。
身構えようとした、僅かな間。アゾナンゴビーの長い尾がしなやかな弧を描いた。 風を切る尾に振り払われた、ニノ、直ぐ後ろのライ。重なり壁に叩きつけられる。
倒れた二人を確認して、アゾナンゴビーは軋む歯車の音がする高笑いを響かせた。 |