挙げ句の果てに、泣き出す始末。こうなっては、ガイラスではお手上げである。直ぐさま大声で“慰め担当”を呼び出した。「こいつ、どうにかしてくれや」 ライの一大事とあれば、リョウは光の速さで現れる。傍らに跪き顔を覗いてきた。「どうした、ライ」「リョウー……ニノが、ね」 あらましを聞き終えて、スッと立ち上がったリョウの顔は宛ら閻魔大王か阿修羅。 ガイラスは密かに十字を切るのだった。 一方、今日が自分の命日になるかもしれないことなど、全く気付いていないニノ。 馴染みにしている店から、揚々とした笑みを浮かべて、足取りも軽々と出てきた。 宿に向かう道すがら、何度と無く手の中にある物を見ては、緩みきった顔をする。「くぅっ! 何回、見ても良いモンだぜ」 そう、独り言をほざき、身を捩らせた。「何が、良い物なのだ?」「……あ?」 顔を上げた、刹那。突如として巻き上がった疾風の圧力により、吹き飛ばされた。