cross×時空間の果て×cross | ナノ

cross×時空間の果て×cross(60 / 65)

 
時間は、まだ昼には遠い。
アッサラームの気候に程遠い、北に位置する大地の。
朝の冷気が肌を突き刺す。

村の中からは、作業に勤しむ。村人達の声が響く。

「ああっ!皆さん!」

入口に居並ぶ四人に気付き、声を上げたのは。
共にサマンオサから戻ったはずのキカだった。

「キカ!良かった!」

「皆さんこそ、ご無事で何よりです」

ヒバナの傍に、 キカは駆け寄った。
お互い、安堵の表情が浮かぶ。

「私、あなただけはここに帰れたのかなって。ずっと不安だったの」

「私も、本当に先程なんです。この村に戻ったのは」

キカの手を貸り、ヒバナは立ち上がった。

「ですが、皆さんの姿が見えず…村の中を探して歩き。こうしてまた会うことが出来ました……ん??」

キカの形の良い鼻が、微かな風に含まれる香りを嗅いだ。

「どこと無く、良い香りがしますが……伽羅、でしょうか?」

キカの鋭い洞察に驚き、ルティアとサザルは赤面した。

「あ、あのね。キカ。これはね……」

何か言われる前に、と。
ルティアは自ら、香珠をキカに見せる。

「なんて美しい細工なのでしょうか……」

ため息を漏らす、キカ。
戦乙女たる彼女の繊細な一面が垣間見える。

「これは、どうされたのですか?……我が祖国、イシスでも。目にした事はありませんが」
 

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