時間は、まだ昼には遠い。アッサラームの気候に程遠い、北に位置する大地の。朝の冷気が肌を突き刺す。村の中からは、作業に勤しむ。村人達の声が響く。「ああっ!皆さん!」入口に居並ぶ四人に気付き、声を上げたのは。共にサマンオサから戻ったはずのキカだった。「キカ!良かった!」「皆さんこそ、ご無事で何よりです」ヒバナの傍に、 キカは駆け寄った。お互い、安堵の表情が浮かぶ。「私、あなただけはここに帰れたのかなって。ずっと不安だったの」「私も、本当に先程なんです。この村に戻ったのは」キカの手を貸り、ヒバナは立ち上がった。「ですが、皆さんの姿が見えず…村の中を探して歩き。こうしてまた会うことが出来ました……ん??」キカの形の良い鼻が、微かな風に含まれる香りを嗅いだ。「どこと無く、良い香りがしますが……伽羅、でしょうか?」キカの鋭い洞察に驚き、ルティアとサザルは赤面した。「あ、あのね。キカ。これはね……」何か言われる前に、と。ルティアは自ら、香珠をキカに見せる。「なんて美しい細工なのでしょうか……」ため息を漏らす、キカ。戦乙女たる彼女の繊細な一面が垣間見える。「これは、どうされたのですか?……我が祖国、イシスでも。目にした事はありませんが」