◇夜の自警団◇「……すまぬな、サザル殿。あやつには後に灸を据えておく」 ダルダスの介助によって、辛うじて立ち上がったが、かなり脳天に効いたらしい。 覚束無い足取りは、酩酊時のそれ。小刻み振られた頭は、まるでメトロノームだ。「ご、ごめんなさい。あいつってば、ホント最低。でもね……多分だけど、サザルさんのことを気に入ってたんだと思うんだ」 ライの手が、サザルの頭へ触れた。唱えられた“ホイミ”が忽ちに癒しを与える。「見送りにきたのが、何より証拠だしね」 軽く押され、サザルの身が二歩、三歩と後退すると、その位置はルーラの発動点。 ……本当に、最後の別れである。「さあ、ヒバナ殿!」 ――呼び掛けに、力強く頷き唱えた。 疾風に包まれ、四人の体が大地とも別れを告げる。開かれた時空間に向かい飛び立つ体は、穴に触れたと同時に……消えた。 閉じてゆく時空間から、ライは目を離せず涙をこぼす。慰めに、頭を抱えてきたリョウの目元も、僅かな赤みを帯びていた。「良い奴らだった……俺ぁ、俺ぁなあ!」 寂しさの余り、言葉も出ないライとリョウの後ろで、雄叫びを上げてるガイラス。 ……海馬の鳴き声に似た叫喚も、渦巻く時空間へと、飲み込まれてゆくのだった。