◇夜の自警団◇ 「ふぅん、オルテガの……な」 嘘などついていない瞳。真っ直ぐな、それでいて揺るぎない瞳である。一方、ツゥと口端を持ち上げた、ニノ。左目の紺碧が更に深みを増して、妖しいまでに輝いた。「教えてやってもいいけどよ、高いぜ」「それは、どういう意味でしょうか?」 気丈に返してきたルティアに、ニノは眉を上げて、ヒュウッと軽快な口笛を吹く。「そりゃま、金じゃねぇのは確かだな」 ニノの指がルティアの唇へ近づいた……「ニノ、見つけたよ! もう、逃げられないんだからねっ!!」 ……突如と開かれた店の扉。同時に放たれた声に、ニノの顔色は瞬時に青褪める。 入ってきたのは、ルティアに何処と無く似たものはあるが、かなり小柄な少女だ。 ニノにとって何より大事な少女である。「お前って、ホント最低っ! ダルダスさん、凄ーく怒ってたんだからね!!」 ルティア達に全然気付かず、少女はニノに詰め寄り、頬を膨らませて、むくれた。「や、悪ぃ悪ぃ。つか、あんた一人?」「うん、みんなはアッサラーム。ダルダスさんに、“時空通路が乱れてるから一人で行きなさい”って、言われたんだもん!」 そこまで、一気に捲し立てると、漸く、ルティア達の存在に気付いたようだった。