終わりの始まり


バン!!

乾いた銃声が、青い青い蝦夷の空に響き渡った


私の数歩先で馬に乗り、指揮をとっていたあなたの後ろ姿を同じく馬に乗り、その姿を誇らしく見ながら追っていた時だった


銃声とともに見たものは、あなたが馬から崩れ落ちる姿。私は急いで駆け寄った

「土方さん!!」

地面に投げ出された土方さんの身体を揺さぶる。するとあなたはひそかに呻き声を挙げ、私を見た

「ゔ…雅美大丈夫だ、こんなの…かすり傷だ…」
土方さんはそう言うけど、腹部に貫通した銀弾は羅刹の彼も堪えただろう。流れる血は止まらない

「まだ大丈夫です!速く陣営地に戻りましょう」

このまま死なせたくない。死なせない。確かにこの傷は致命傷。だけど、ここで諦めたら何もかもが…終わりになってしまう


「いや…いい。それより…蝦、夷の桜…を見に、行こう」

私は、喋るのも辛そうな土方さんを見て何も言えなくなった。…彼はもう助からないことを知っている。このまま陣営地に行くためには敵が沢山いる所を通らなければならない。そこで死ぬより、最期には桜を眺めたいのだろう…思い出の京の桜に似た蝦夷の桜を。

「土方さん、着きましたよ」

ボロボロの私たちを迎えてくれたのは、京の桜に似た、蝦夷の一本桜。凛と真っ直ぐに咲くそれはとても力強く、とても儚い

「京の…あの、桜を…思い出すな…」

京で交わした約束。一緒にいる。いつまでも離れないと。

「そう…ですね」

うっすらと涙が瞳に溜まる。…一緒にいきて。そうあなたに叫びたい。


「雅美…や、くそくしよ…う。来世…生まれ、変わったらまたこの桜の、下で…巡り会おう」

蝦夷の桜の前で交わした約束。来世、この桜の前で巡り会うこと。

「だか、ら…お前は…いきろ…ずっと…忘れないか、ら」


「は、い…ずっと…愛してます…土方さん」

そう言ってあなたに最後の口づけを落とした



 

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