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金緑石

 ほんのりと鼻が赤くなるようなクリスマス前の寒い昼間にセギヌスはホグズミートの入り口で眉間にシワを寄せながら立っていた。


行き交う人々を睨みながら顔を確認し、ずいぶん時間が立ってからお目当ての人物がセギヌスに声をかけた。



「お待たせしたわね。」


濃紺のコートに毛皮の帽子を被った相手は少しも悪びれずに笑った。


晴れた冬空の下では青いコートは一層肌の白さを際だたせた。



「私あそこに見えるカフェで30分お茶したのよ?」

「あなた犬みたいだったわ。少し可愛いわね。」


パーキンソンが意地悪くいうとセギヌスはクソ寒かった、早くしろ。とはや歩きで歩きはじめる。


「悪かったわね。少しからかってみたかったのよ。きょうはクリスマスプレゼントを買う手伝いをしてもらおうと思ったの。」



たとえるなら、彼女は水を得た魚のようにショーウィンドウを見て回った。
そして気に入ったものを見つけては店の中に入っていってしまう。




ホグズミートの賑やかに装飾された街のなかで彼女のことを見失ってはいけないと、セギヌスは小さな子供をもてあます兄のように後をついて回った。
時には持ちきれないほどの荷物を抱えて走らなくてはならなかった。時間が経つにつれ混んでいく村についにセギヌスは彼女を見失ってしまった。

途方にくれていると、スリザリンの生徒とすれ違う。

「やあ、レストレンジ一人かい?寂しいなあ?」

ケラケラと笑う集団にパーキンソンのことを聞くとあっさりと見つかった。

「修羅場なんて見たくないぞぉ」


背中を追う声を聞き流して店をくぐるパーキンソンの後を追った。


店の中には装飾品がならべられてあり、随分高額な値札がついていた。
とてもじゃないが学生の身分では買えない。

ガラスケースを眺める彼女の後ろに立つと、びくりと身じろぎした。


「これなんだと思う?」


指差す先には黄色がかった石の指輪が飾られている光の加減で赤色にもみえる。一際高価な石。


「アレキサンドライト」

呟くと、さすがねえと言葉とは裏腹に苦々しい声で返ってきた。

店の中に人は少なく、セギヌスはパーキンソンの声にだけ集中した。


「彼の誕生石なのよ、これ。生まれに由来する石まで高貴だなんて本当に彼らしいわ。」


でも絶対にほしいの。彼に贈りたいのよ。


そう言いながら彼女はそれからいつまでも指輪を見続けていた。

───

「…坊ちゃま!坊ちゃま!聞こえていますか?朝でございます。クリスマスの朝です!」


自屋の反対側からしもべ妖精が手をふっているのが分かった。

神聖なるクリスマスの朝、重い瞼を開けるとプレゼントの山が顔を出して。いつもより賑やかなテーブルが存在を主張した


「今日は随分とはやく起こすんだな。」



学校の友人からの山を手早く崩すと小さなひとかたまりを抱えてセギヌスはおそるおそる包みを破き始める。特別な日でございますから。と今度はすぐそばで声がかかる。


それぞれの顔を思い出しながら贈り物を並べる朝は気分を良くする。たぶんザビニは笑いを取りに来る、とかノットはいつも以上に綺麗な字でカードを書いてくれているだろう、とかドラコからは何でも嬉しいとかとか。

それからしばらくしてひとつ困ったように微笑んでセギヌスは暖かなシーツを脱いだ。きっと今どこかで同じように笑う友人たちを思い出しながら。



『 親愛なるレストレンジへ──まあなんというか先日のお礼ね。誕生日とクリスマスをかねて。有り難くおもいなさい。メリークリスマス。 』



緑石は高貴の証。ラピスラズリの友愛はいつでもあなたの隣に





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物語終了後に彼が他の女性と結ばれたと聞いて彼女を想って泣いたのはいい思い出です。レストレンジとパーキンソンはなんだかんだで仲が良いとしたかった。ちなみにレストレンジ12月生まれは旧館のデフォです
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