有り得ない、そんな、 セギヌスとドラコは全く別の理由絶句した。 「…『Dマイナス』!」 まずはドラコが真っ青な顔で叫んだ。 その声に談話室でくつろいでいたスリザリン生は皆一斉に注目する。入学以来教授のお気に入りで、授業態度も良く、加えて成績もかなりいいマルフォイが、課題で最低評価。 たいそうな衝撃だ。 「有り得ない、この僕が…」 「ははは!僕でさえC+なのに。ノットなんて『B+』だ!」 「ザビニ。お前C-だろ。しかも俺のものを冒頭写して…」 ドラコとザビニが小競り合いを始めた一方、セギヌスはソファーから微動だにしなかった。 「有り得ない…」 なんと自分のレポートが『A』判定を貰っている。 無論薬学の課題だ。 飛行訓練ではないし、実技でもない。 セギヌスは目を見開いた状態でフリーズした。そしてもう一度黒くインクで「A+」と書かれた用紙をみた。 夢じゃない。 今回は勿論簡単な内容というわけではなく、むしろ難しく、セギヌスにとって「意味不明、チンプンカンプン」だった。 手伝いを懇願しても皆一様に首を横に振り、 「自分の分だけで手一杯だ」 とスリザリン気質を発揮した。ノットにさえ無視された。セギヌスは半分死にながらもなんとか提出したのだ。 もしかしたら自分はやればできる男なのではないか だんだんと落ち着いてきたセギヌスはそう考えた。今まで頭突きにしか使用されない頭とさえ言われてきた自分だったが。 セギヌスは気分よく長い足を組み、頬もゆるんできた。 「だいたい僕はこのレポートを仕上げるのにどれだけの時間を…」 「まあ、気を確かにもて、"Dマイナス=Mまさかの"、でドラコ=マルフォイ、なんてな」 ザビニが吹っ飛んだ。 無論パーキンソンが呪文を使ったのだ。 その言葉にセギヌスは急激に夢から覚めた。 (ドラコがD?) 彼に言わせれば、 "自分がAを採ることが有り得ても、 ドラコ=マルフォイがDを採ることは有り得ない" のである。 「ーーー」 急な笑い声に三人は静かになる。 しかも笑い声の主は今回の課題で一番ダメージが大きいはずの セギヌスである。 「ついに狂ってしまったのか?」 ノットが心配する しかしドラコ=マルフォイは違った。 「お前もか、セギヌスッ!僕を笑うなんて見損なったぞ!」 それにたいして未だにセギヌスは口を手で抑えて笑いをかみ殺すが、しばらくしてやっとしゃべり始めた。 「名前をよく見ろ。ドラコはこっち。僕はこちらのレポートだ。 ふたりでのレポートが混ざって、三枚綴りのうち一番上のものだけが逆になったんだ。」 そしてセギヌスは一つため息をついて微笑むと、レポートをドラコに返す。 「ほら、お前は『Aプラス』だ。大体おかしいだろう、この僕がAだなんて。それこそ"テンペンチイ"だ。 全くお前は昔からせっかちだから…」 しかし、セギヌスがすべて言い終える前にまばらに様子を見守っていたスリザリンの女子生徒から歓喜の悲鳴が談話室に響き渡った。 ドラコがセギヌスにタックル、つまり抱きついたのだ。 「やっぱりお前は親友だ!さすがだ!僕がD?有り得ない!!馬鹿だ、馬鹿だとは思っていたがな!ははっ!お前、Dマイナスは有り得ないだろう!」 セギヌスとしてはドラコが元気になってくれるのは嬉しいが、野郎に抱きつかれもちっとも楽しくないし、なんだか黙って聞いていたら結構ひどいこと言われている気がする。 加えてドラコは自分が最低評価ではなかった嬉しさのあまり我を忘れているので、いまだにひっついている。 しかしそれもすぐ解消された。 「ちょっとレストレンジ、ドラコから離れなさいよ!馬鹿が移るでしょう!あんた本当にそれでもスリザリンなの?一年生からやり直しなさいよ。」 パーキンソンが間に割って入り、無理やりドラコを引き剥がした。 「パーキンソン、僕はAだったぞ。」 「あたりまえよ!」 セギヌスは自分のソファーにもどると背伸びした。やはり自分が最高評価なんて無いはずだ。しかしドラコが手放しで喜んでいるのを見ると微笑ましいと思うし嬉しい。 ドラコが満面の笑みで振り返る。 「セギヌス大好きだ、さすがは親友!兄弟!」 「分かったから、くっつくな!ああやっぱりくっつけ。頭の良くなる成分をもらう。はい、ぎゅー。」 パーキンソンがセギヌスを蹴り飛ばすまで後、三秒。 ***** 長い。リクエストにそえているでしょうか。心配です。ギャグ甘ということでした。 今回はザビニくんも登場。時期は三、四年生ごろ。 趣味に走りました。パンジー大活躍!! ことら様リクエストありがとうございました。 |