朝の大広間、梟便がひと段落した頃。スリザリンのテーブルで、ピアノ弾けるか。というパーキンソンの質問にドラコはああ、とコーヒーを飲みながら返事をした。 彼女はさすがね。と嬉しそうにドラコを見つめ、さりげなく、今度聞きたいわ、とお願いした。 対面に座るセギヌスは朝食を普段とらずに睡眠にあてているので、席で船を漕いだ。 彼自身今日は休日で昼までベッドで過ごす計画を立てていたのだが、気づいたらここにいたのだ。 「父上も母上もピアノがお好きなんだ。その影響で僕も引けるようになったんだ。」 彼の長い指が鍵盤をなぞる様子はたやすく想像できた。 それは抜群の破壊力を持って彼女の、しいては、女生徒の心に猛威をふるうに違いないと。 「家ではよく弾いたりするの?」 「去年の母上の誕生日に。一曲」 と、気だるそうにベーコンをかじっているセギヌスをちらりと見て、言った。 パーキンソンのテンションはこれでもかというほど上がった。自分の誕生日にピアノを奏でるドラコはなんて素敵なのだろう。 じゃあ今度私にも、とパーキンソンがいった。しかしドラコは駄目だ。と断ってしまった。 彼女はみるみるうちに膨れ面になって、どうして?と詰め寄った。 わたしにも聞かせてほしいわ。 「他の曲なら弾いても良いが、『アヴェ・マリア』は特別なんだ。」 「それは誕生日に弾いた曲でしょう?なぜ、」 とても素敵な曲なのに。 しかしここでドラコは面白そうにクスクス笑い出した。 彼が歯を見せて笑うことなど珍しいので周りはすこしばかり戸惑ってしまう。 「"アヴェ・マリアは叔母上の為に作られた曲に違いありません。僕はそう思います。"」 ドラコは誰かの声色を真似て真剣な表情を作り出していうと、そのときの様子を思い出したのか、また笑いだした 「まあ。その人ドラコのお母さまが好きなのね。"あなたの為に"なんて、なかなか言えないわ。」 「まあ彼にとっての"マリア"なんだろう。だから君には別の曲を…」 パーキンソンの私にはどの曲が似合うのかしらなどといってドラコを困らせている様子を確認するとセギヌスは肩の力を抜いた。 そして今日一日中ピアノを弾き続けるはめになるかもしれない友人を置いて席を立ったのだった (まあ、ありがとうセギヌス。でもわたくしがマリアならドラコは) (あ、) (なぜそこで詰まるんだ!) (まあまあ) (というよりお前セリフがくさいぞ。) (…!) ***** 5000hitリクエスト連載番外編でした。リクエストに沿えたか心配です。 ドラコはピアノが弾けると思います。きっと恐ろしく似合いますね。 「叔母上」といっていますが、周りはいとこ同士とまだ知らないので(はず)。 ユラ様、ありがとうございました。これからも『くれびと』をよろしくお願いします。 |