季節、変わり目、秋色の空
まさか、あの人が人狼だったなんて信じられない。僕は食べるはず桃の砂糖漬けを吹き出した。「きったねー」なんていちばんに言うはずの先輩はスネイプ教授を真っ直ぐにみて、空いた口がふさがらないという顔をしていた。
優しくて聡明でユウモアのある彼から化け物と言われる人狼は直ぐには結びつかない、というより脳が受け付けないんだなあ。
しばらくしてめでたく口がふさがった先輩がおぼつかない様子で僕が吐き出した桃を食べていた。
その日教室では様々な憶測や誹謗が飛びかった。昨日まで信頼や尊敬を寄せていた彼がまさか、てな感じでクラスは一様にどんよりとした空気に覆われていた。
誰もが裏切りに値すると思っているのは明白だった。
「あのさあ、今思ったんだけどな、よく考えたら俺たちスゲーよ。」
不意に先輩が呟いた。なんだかなあ。主語がないからね、わかんないや。
風呂上がりの先輩の濡れた髪から水が滴ってシーツが濡れた。こっちを得意げに見た。にぱアと笑顔が眩しい。
「だってさ、俺たち確かに彼が好きだっただろ。」ああ、そうだなと相づちうちながら、
僕はバスタオル奪って髪を拭いてやる。
「だってあいつは魔法がうまくてユウモアがあるカッコいい大人だった。今だって最高にイカしてるって思ってるんだぜ。」
「俺の言いたいことわかる?アーユーアンダスタン?」
「あんたの国語力のなさがね、よくunderstand.」
そういって濡れたタオル振り返った顔に全力で投げつけた。
今日は月が綺麗だなあと話す先輩の腑抜けた声を聞きながら先生はどうしてるんだろうか、と柄にもなく考えて。
そしてゾッとした。
(お前何気に俺にあたるなよな…)
(うるさいですよ。)
(濡れたタオルは本気で痛いんだからな!!)
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