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春待ち人
 陽気な春の日差しに誘われて、図書館から、一冊の本を持ち出した。
ぶらぶらと談話室をさまよっていると、案の定、談話室は閑散としていた。

みな考えることは同じで、湖を中心に生徒がわらわらと、集まっている。


ホグワーツに入学してもう6年になって、あと少しで、7年きっかり。



湖では楽しそうに談笑したり、呪文のかけ合いをしたり。(もちろん冗談の範囲で)
なんだかなあ。モラトリアムにつかりすぎると、ぬけだしたくなくなるんだよなあ。
もう一度一年生に戻りたいだなんて。

「あるわけないよなあ〜」


おまえさあ、白昼夢見てる場合かよ。



もう就職だって闇祓いに就くって決めたんだろ。
ずっと夢だったじゃんか。
自分は身寄りがなくて、マグルの孤児院育ちで、いつか警官になるんだと思っていた。
そうしたら、助ける。とりあえず、困っている人全部、全部。
任せろ、もう俺がきたから心配はいらないからって。

闇祓いになったらきっとさっきみたいな情けない気持ちなんて、吹っ飛んでいくだろう。



さあ、俺も外行くぞ。辛気臭い話なんていやだいやだ。
とおもったら後ろから見計らったように「なんだ、いたんだ。」って。
かわいくないなあ。さっきから見てたくせに。




「こんなところで何してるの?」

「俺は情けないなあってね。」

「この、中二病め。」

「ひどいなあ。そういうこと言ったらいけないんだぜ。」


ああ、そうですか。すみませんねえ。
といって奴はツーンとすましてぷいっとまた部屋に戻ろうとする。
なんだお前、ネコかよ。めんどくさあ。
俺にかまってほしくてつけてきたんだろ。



「お前どうすんだよ、卒業したらっ!」


しかし、やつは出口の前でいきなり反転してすごい剣幕で怒鳴ってきた。
おやまあ、びっくり。怒っちゃって。
顔を真っ赤にして、ジーっとこっちをにらんでくるあいつは、卒業したら魔法界とは縁を切って、実家に戻るつもりらしい。
お前こそどうするつもりなんだと聞きたい。


「はあ?ヤ・ミ・バライに決まってんだろ?俺優秀だからこまっちゃうよなあ。引く手あまたってやつ。ホントはクディッチの選手でもよかったんだけどねえ。オリバー先輩みたいに?」



箒のれないじゃんか・・・というつぶやきは華麗にスルーすることにする。浮けりゃ、上等。問題ねえよ。



「わかった、わっかてるよ。心配すんなよなあ。」
「ディコリー死んだんだよ?!問題大ありだろ!!」


なんだよ。そのことかよ。泣いちゃってアホかオマエ。
気づけば顔じゅうびしょびしょにして泣き叫んでたアイツがいた。
同じ寮でしかも同級生だったディコリーが死んだのは去年。
みんなびーびー泣いてたけど俺は泣けなかった。もう闇祓いに内定していた俺は恐怖で泣けなかった。

馬鹿みたいに次は俺だと、足ががくがくだった。




「今更そんな話してんじゃねえよ。俺はあいつほど馬鹿じゃねえ。調子のってから、しぬんだ、よ・・・」


最後まで言えなかった。正直途中で呪文で吹っ飛ばされて喧嘩になると思ってたのに。
だから杖までポケットの中で握ってたのに。

見つめた先のあいつは思いっきり冷めた目で俺を見ていた。


「じゃあ“先輩”は絶対に死ぬでしょ。馬鹿だもんあんた。」


怒ったり、泣いたり、冷めた眼でカッコつけてみたり忙しいやつだと思ってたけど、ついに壊れたみたいだ。急に笑ってやがる。
泣き顔で笑ってるから正直ホラーだ。
イライラしてきた。さっきまで確実に俺が主導権握ってたのに。信じらんねえ。
何がおかしいんだよ。この野郎。


「ひどいなあ。それって俺がバカってこと?これでも次席なんだけどなあ・・・っておい。」


奴はいまだにくすくす笑いながら階段登って行った。言い逃げかよ。何なんだよ。









**********


相当キてたけど、湖に行くことにした。気分転換だ。せっかく本も借りてきたし。
はあ、せっかくの休日が、シュールすぎる。
湖に続く道をすさまじい顔で歩いていると、案の定、級友が声をかけてきた。
しかし今は一人になりたい。


あいつの泣き顔が頭から離れなかった。








(あいつ、どうしたんだろ)
(さあ?)
(本なんて持っちゃって、まあ)
(・・・なあ、)
(・・・ああ。)


(((泣いてたな。)))







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