×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -




10
 コツコツ、外から音がした。



「…ふくろう」



灰色の大きなふくろうが車のフロントを叩いている。クリクリとした可愛い目がじっと自分を見つめている

母さんは起きない。


そっと車を出てふくろうがいるところまで移動した。


ふくろうなんて生まれ初めてみた。


動物園は母さんが
『自然に反する』とか何とか言って連れて行ってもらったことがない




ーー要は面倒なのだ



恐る恐る近づくと、ふくろうの足には手紙が結わえてあった。



ーーそれが自分に対するものだとなぜだか直感的に分かった
そう とても懐かしいような気がした


車から離れたところまで移動してそっと手紙を離してやる。


ふくろうはホーと鳴いてぴょんぴょんと周りを飛び跳ねた。


手紙を見ると、変わった緑のインクでこう書かれていた



パーキングエリア

木の下


アンドレイ・オスカー様



裏を見るときっちりと封がしてある。
変わった手紙だ。

手紙ならロンドンの家に送ればいいのに。ーーしかし送り主はどうしてここが分かったのだろう。


手紙を見る限り送り主は正確に僕の居所を把握しているようだ。

気味が悪い程に

辺りを見回したが僕とふくろう、母さん以外誰もいないはずだから



「中を見るしかないね」

得体の知れないものだ。危険かも知れない。


心臓が口から飛び出そうだ。昨日から何も食べていない。胃がすり減って喉も乾いていた。



ーー手元の手紙の封を切る








赤い車体が淡く輝いた





遠くでふくろうの鳴く声が聞こえた気がした




『始まりの夏』





[*前] | [次#]

- 10 -
<<