09
病院に連れていくかどうか迷っていると、突然母さんが立ち上がった。
ーーその反動でマカロニ何本かが宙にういた。
そして突然…
「出かけるわよ。ついてらっしゃい!」
「え、どこに。」
僕の問いには答えずに、奮然として立ち上がり、車のキーをひっつかむと母さんは外に飛び出した。
髪をなびかせ疾走する
あまりの気迫に何も言えずただただついていった。
ーー途中で携帯と財布を掴もうとしたが、母さんにしこたま蹴られ、手ぶらとなった
出しっぱなしの洗濯機にぶつかって悲鳴を上げそうになったが堪えた
ガレージについたところで、家に鍵をかけていないことを思い出し、慌て家に戻ろうとするとーー
「アロホモーラ!!」
母さんが細い棒きれを振りながらさけぶと、カチャリと音がして自然と鍵がかかった。
唖然としてつっ立っている僕を車に放り込むようにして何も言わずに急発進させた。
赤い車体が住宅街を疾走する
驚いたエイミー・ロゼフが転ぶのが見えた。
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それからは沈黙だった。
聞きたいことは山ほどあったがなぜか聞けず、抜かされて行く車と代わりゆく緑色の時刻をただ見ていた。
何となくロンドンから離れていることは分かっていた。
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夜中走りつづけてパーキングエリアにはいった。
太陽も上っていない早朝だ
家を出てずいぶん経ったがまだ質問出来そうにない。
夜中走ったせいで、母さんは疲れて爆睡している。
カーラーが力無く垂れ下がっていた
当の僕も疲れてはいたが、とても眠る気にはなれなかった。
ーー母さんは何者なのだろうか。
家を出るときに見たあの行動。
母さんが何か言うと自然と鍵がかかった。
まるでそうーー『魔法』のように
「…アロホモーラ」
低く呟いてみたが何も起こらない。
ーーあの棒きれがリモコンのような役割を果たしていたのではないだろうか。
ふとそうおもった。きっとそうだろう。魔法なんてありえない。
今までそんなことは一度たりとなかったのだ…
真意を確かめよう。そう思い棒きれに手を伸ばそうとしたとき…
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