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08
 窓からは黒い点が遠ざかって行った



一つの知らせを残したままに




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トントントンと小気味よい音が部屋中に広がる。



買い出しも終わり、(洗濯機は結局直らず新しく買った)
今は夕食の準備に追われている。


簡単なものしか作れないが、レパートリーはほどほどある。



ーー少なくとも彼女よりは



そう思って何やらそわそわと落ち着きないない母親を見やる。


先ほどから部屋を右往左往し、挙げ句の果てにふらっと出て行ったかと思うとまた帰ってくる。



奇怪な行動はいつもの事だが今日は一段とおかしい


だいたいにおいて、髪にカーラーは付けっぱなしだし、服が裏表逆だ。



おまけに言うなら靴の左右も違う。




ーーついに本当に馬鹿になったのだろうか。



出来上がった料理を並べながらそう思った。





席に着くといつもはうるさいぐらいによく話す母がだんまりを決め込んでいた。


フォークに刺さったマカロニが力なく頬に当たっている。



思えば自分が帰ってきた時から変だった。


気にせずほおっておいたのがいけなかったのかもしれない。

外では近所のエイミー・ロゼフが花火を上げる音がしている。



ーーこんな時に父さんだったらどうするのだろうか。

父さんには一度も会ったことがない。




自分が生まれる前に死んでしまったと聞かされていた。


たまに聞かされる母の話に現れる父さんは

ーー『母さんを大切にするとても優しいハンサムな人』ーー
として登場してくるが、本当かどうかわからない。






ーーどちらにしても、母さんにプロポーズしたときに空を飛ぶ白馬に乗って登場したというのは確実に嘘だろう。





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