来訪の理由 弍


「それでは本題に入らせて頂きます。
まず、貴女は何故自分がこんな目に、と思っていますよね。では何故だとお考えですか?」


「……うーん…」


私は確かあの時、学校帰りに友達とコンビニ寄ってパピコとお菓子、それに夕飯のレンジ飯買って、交通ルールも守りながら普通に歩いて帰っていた。


無論、万引きも窃盗もしてない。
焦って道路に飛び出してもいない。
通り魔に出くわした訳でもない。
居眠りや飲酒運転の車が突っ込んできたわけでもない。


つまり、トリップの原因となる要素は、私には存在していない。


二次創作物のトリップ小説でよくある原因で、残っているのは…



「神様の気紛れか、未熟な神様の昇格テスト……ですかね?

でも時雨様は気紛れって感じじゃないから、あるとしたら後者じゃないかな、と思います」


「………正直に言わせていただくと、[気紛れ][未熟][テスト]全部正解です」



時雨様は深いため息を吐いて項垂れる。


うん、何となく覚悟はしてた。私がここに来たのは、神様───恐らく時雨様じゃなく、時雨様のお師匠みたいな神様───に適当に選ばれただけの話だったのだ。


何か悪いことしたわけでもなく、死んだわけでもない。それがわかっただけでもありがたいけど、何十億分の一という確率にドンピシャしちゃったせいであの鬼畜ドSにこれからこき使われるのかと考えると、ありがたさが絶望感に相殺される。



「……その様子だと大体察された様ですが、一応説明をさせていただきます。


ボクが代替わりする際、前任…ボクの師である神にテストをさせられたんです。テストの内容は、[師が選んだ人間を師が指定した世界に飛ばし、3年間その経過を見守る]という物……このテストはボクらのような世界の体裁を保つ任につく神が代替わりの際に必ず行ってきたテストですが、師はとても気紛れな方で…指定する[人間]と[世界]を、ダーツで決めてしまったんです。そして運悪く当たってしまったのが貴女。そういうわけです」



予想通り、殆ど正解。
にも関わらず全く嬉しく感じないのは、聞き流せない言葉を聞いてしまったからだろう。それは出来れば知りたくなかった、知らなきゃよかった事実。



「……3年間…って、どういう意味ですか」


「言葉の通り…です。最低でも3年間、貴女は彼処にいなければならないのです」


「………おわった……」



1ヶ月、いや、1週間、いや、1日。それだけでも耐えられなさそうな鬼畜武将の小姓生活が、最低でも、3年。どんなに嫌でも、3年。その事実は、私の心を深く抉ったのだった。



「あ、でも、今までトリップした人の中には、延期したりそのまま居座った人もいるくらいですし、3年も経てば気が変わるかも知れませんよ?ですから、そんなに気を落とさないでください…」


「…あり得ませんから、絶対、あり得ませんからね」






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