来訪の理由 壱
「……まずは謝らせていただきますー…………この度は真に申し訳ございま…………」
「すんませーん、全然聞こえないんですが」
さて、神様が云々は置いといても、今私は(夢の中で)超巨大ブランコに乗っているわけだ。
神様の声が近付いたり遠退いたりして、聞きにくい。めっさ聞きにくい。
「……取り合えず…………この状態話しにくいのでー………なんとかしてもらえませんかー…………?」
「えっ、何で私に頼むんですか、あなた神様(?)なんでしょ」
「ここは貴女の夢の中……………つまり貴女の想像が産み出した世界なんですー…………。なので想像してくださーい…………。座布団が二枚置いてあるだけの真っ白な空間をー………」
「想像…」
神様の言う通り、座布団二枚しかない殺風景な空間をイメージしてみた。……夢の中でイメージするというのも何か変な感じがするけど。
すると、ブランコもアルプスっぽい景色も消えて、真っ白な空間になり、気付けば神様と向かい合って座布団に座っていた。
「さて、これで落ち着いて話が出来ますね」
「あ、ハイ」
「まず謝礼を…と、その前に自己紹介がまだでしたね。申し訳ない。ボクは時雨、世界の体裁を守る神です…と言っても、まだ代替わりしたばかりの新米なんですがね」
「あ、これはご丁寧にどうも。私は加茂川つぐみです」
深々と頭を下げる神様につられ、私も頭を下げる。
やっぱこの人、神様っぽくないなぁ。神様って慈悲深くて堂々としてるか、やたら偉そうなイメージ持ってたんだけど。いやそもそも、神様の存在自体あんまり信じてなかったから、夢なのもあって今のこの状態は俄に信じられないふしがある。
そんな私の心境を見てとったのか、へらっとヘタレっぽい笑みをみせる神様、時雨…(様つけた方がいいよね)様。
「まあ、いきなり出てきていきなり神ですと言われても、信用性がありませんよね。信仰が薄れているあちらの方々なら尚更に」
「あちら?」
「……あっ!ボ、ボクとしたことが、本題を忘れてました。申し訳ありませんすみませんごめんなさい」
「いっ、いえ、そうお気になさらないで下さいこちらも忘れてましたから!」
ごんごんと頭を地面(地面もくそもないけど)にめり込ませかねない勢いで平謝りする時雨様。やっぱこの人神様じゃないだろ。入社早々失態おかした新米社員だろ。
その後何とか時間をかけて諌め、漸く本題に入る事になったのでした。
…本題に入ってない上に夢の中だってのに、何でこんなに疲れてるんだろう私。
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