愛の力で謝罪を覚える系男子



「ザビー様…!!」



あれ、誰だっけこの人。


私は首を傾げる。この戦国時代に落ちて毛利軍に身を置くようになってから……多分一年たった。
城の皆さんとは仲良くやってきたし、ここの当主の毛利元就様ともようやく顔を合わせれば会話をする程度の仲にはなった。


このお城の人、というか毛利軍にいる人の顔なら皆覚えてると思ってたんだけどなぁ…。私知らないよこんな人。


元就様の部屋に変なカッパ頭の外国人のどでかい肖像画飾って崇め奉ってる元就様そっくりな人なんて知らないよ。


おかしいな、この部屋の主は今の時間Y字ポーズで太陽崇め奉ってるはずなんだけど、どこ行ったんだろ。



「……そこの元就様のそっくりさーん、元就様どこに行ったか知りません?」


「何を言う花子、そなたの目の前におるではないか」



此方を振り向きにこやかに言うその人。え、ちょっと待って。


目の前に元就様、なんてあり得ないでしょ、今私の視界に映ってんの元就様似のアンタだけだよ。つーかなんで私の名前知ってんのさマジでアンタ誰だよ。


そんな私の心を見透かしたように、元就様のそっくりさんは声高らかに言い放った。



「我が名はサンデー毛利、愛に目覚めし者ぞ」


「成程、親族の方でしたか」



毛利、とか言う辺り元就様の親戚なんだろう。それなら顔がそっくりなのもなんとか納得できる。


いや待て自分、それでも私の名前知ってた理由にも元就様の部屋を改造してる理由にもなんないぞ。



「花子」



とかぶつくさ言ってたら突然元就様のそっくりさん…サンデーさんに抱き締められた。え、ちょっと待ってやだ背筋ゾワッてする。



「ちょ、やだ離してください!」


「何を言う、我とそなたの間柄ではないか」


「今会ったばかりなのに間柄もくそもないでしょうがぁぁぁぁ!!」


「否、会ったばかりなどあり得ぬ。何故なら




我は『サンデー毛利』であり、『毛利元就』でもあるからだ」



……………………………はい?



「さあ花子、我が愛の方程式、貴様に手取り足取りじっくりねっとり教え込んでやろう」


「いらねぇぇぇマジで!ていうかえ、本当に元就様!?うそん!」



いや、実は最初見た時点で薄々そうじゃないかなーとは思ってたさ。
あれこの人元就様じゃね?とは心の隅っこの更に隅っこの方で考えてはいたさ。
現実から目を180度背けてただけだって自覚はしていたさ。


だって、元就様といえば冷徹無慈悲無表情でドSで太陽が好きな変人で、「愛」なんて聞いただけで虫酸が走るような人だ。間違いなく。


それをこんな優しげだけどどこか妖しげな笑み浮かべつつ抱き締めながら体の至るところ擦ってきて「愛」を連呼する人に当て嵌めるなんて、出来なかったんだもん!



「つか擦るなし!」


「む、何故ぞ。何故我が愛を受けぬ」


「これは愛じゃないです。ただのセクハラです」


「せくはら…ああ、性的嫌がらせという意味だと言っていたな。すまぬ」


「!?元就様が謝った…だと…!?」



嘘だ。元就様は例え自分が悪かろうと絶対謝らないジャイアン気質なのに。


この間、縁側に置きっぱなしにしてた私の桜餅勝手に食われた時も

「我悪くない。このような場所に置きっぱなしにしておく花子が悪い。甘い匂いを放って我を誘惑した桜餅が悪い」

で貫き通したような人なのに!



「ああ、以前の我は愛を知らなかったゆえ、な」


「知らなかったのは礼儀と譲り合い精神かと思いますけど!?」


「しかし、我は愛の素晴らしさを悟った。今まで酷くしてすまなかったな。これからはそなたに辛く当たらず、優しく慈しむように接する。そして共にザビー様への永久の愛を誓おうぞ」


「いやぁぁぁぁ元就様が優しすぎて怖い!
もういっそ一生あの性格でもいいから元の元就様に戻ってぇぇぇ!!」


「さあ、共に唱えるのだ、ザービザビザビザビザビザビザビザー」


「うわああああん!!」



Help me!

そう心の中で叫んだ途端、足元に空いた穴に吸い込まれるように落下した





タイトルは、『草食系男子』と同じ感じのニュアンスで。
続きます








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