理解不能





私の親友は、どうにも惚れっぽいらしい。



「花子、私恋してるかもしれない」



この台詞を、今まで何度聞かされただろう。友子とは10年の付き合いだが、恐らく10回以上は聞いていると思う。つまり、一年に一回どころじゃないくらいの頻度なのだ。
単に"惚れっぽい"のではなく"目移りしやすい"だけなのかもしれないけど。


とにもかくにも、この台詞が友子の口から発せられたということは、今日より彼女のお目当ての男が変わったことを示していた。
前は確かサッカー部の真田くん、その前は番長の長曽我部くん、更にその前は猿飛先輩だったっけ。今度は誰かな。きっと爽やか系だろうな。



「…で、今回はどちら様?」


「石田くん!」



外れた。
爽やかな男が好みじゃなかったのか。ああそう言えば三回目くらいは物静かな文系少年だった気がする。


しかし石田くんか。石田くんといえば囲碁将棋部の徳川くんを何故か木刀片手に追っかけ回してる前髪がアーモンドみたいな一年生。
「いぃぃえぇぇぇやぁぁぁぁすぅぅぅぅぅ!!」の叫び声とあの言っちゃなんだがGみたいな走りの彼に恋する理由がわからない。顔しっかり見たことないけど、イケメンなんだろうか。



「カッコいいの?」


「カッコいいに決まってるじゃない!今度近くで見てみなよイケメンだから!」


「あの速さで動く奴の顔を見るのには相当動体視力必要だよ」



っていうか、いつ見たんだ花子。あの真田くんに夢中になってたアンタが校内をスーパーカーのように走り抜ける石田くんの顔を見ようとなんてしないはずなんだけど。



「さっき缶ジュース買いに言った時ね、石田くんに撥ね飛ばされたの」


「撥ね飛ばされて惚れるんかお前は」


「違う違う!そんでね、撥ね飛ばされた私を徳川くんが『大丈夫か!?』って追われてるのに私の心配してくれたの。そしたら石田くんかやって来て、『私の通行の邪魔をする貴様が悪い』って言ったあと、徳川くんをまた追いかけて行ったの!まさに一目惚れだったわ!」


「私がその時のお前だったら多分徳川くんに惚れてるわ」



普通助けた方だろ。撥ね飛ばした上に暴言吐いてった奴になぜ惚れる。あれか、結局顔か。顔なのか。



「とにかく!私は今石田くんに恋してるの!石田くんにフォーリンラブよ!」


「真田くんの時も長曽我部くんの時も猿飛先輩の時も同じ台詞吐いてなかったっけ」



結局真田くんもフォーリンとはいかなかったか。今度の石田くんもいつまで持つことやら。



ああ、私にはこの親友の惚れやすさが理解出来ない。








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