朝起きると、先輩が小さくなっていた。言葉の通りである。漫画でよくあるような、アレ。

「え、何で?」
「それはこっちの台詞だ!お前、またくだらないことを……」
「いやいや」

とりあえず中身までは退行していないようで安心する。念のために昨晩の記憶を思い起こしてみるが、俺は何もしていない。しかし普段の行動が祟ったのか、先輩はじと、と訝しげに目を細めたままだ。

「もしかして、俺信用ない?」
「今頃気がついたか?」
「それは困るっすね」

第一、先輩がいやに冷静なものだから、危機感というものが完全に抜け落ちている。普通に考えてみればかなりイカれた状況だ。理解できない。試しに頬を抓ると痛かった。

「先輩、これやっぱ夢じゃないみたいですが」
「……そのようだな」

呟く先輩は、心なしか青ざめて見えた。この人が冷静だったのは、どうやら現実逃避していただけらしい。改めて先輩の姿を眺めてみる。

俺は幼い頃のグリーン先輩なんて知らないから、お目にかかるのは勿論これが初めてだ。鋭い眼差しは相変わらずだが、今は酷くあどけない。すらりとしていた体格も、小さな幼児のそれで、おまけに着ていた服はサイズもすっかりと不適合になって、ぶかぶかだった。それがシーツに包まって俺を見上げている。要するに、可愛い。目茶苦茶可愛い。流石にこの状態の先輩に手を出すつもりはない。しかしこれはいろいろと危ない気がする。

「どうしよう、俺大丈夫かな……」
「お前は何ともないだろう」
「あー、そういう問題じゃないっす」

どういう仕組みでこうなったかはさておき、先輩が元に戻るまでこのままなわけで、俺には拷問しか思えなかった。