「え、なに、うわ」

寮に戻ると突然、シリウスが僕に突進してきた。
抱き着くのかと思って当然身構えていたのだが、彼の目的は違うらしい。

「リーマス、脱げ!」
「……はあ?」

第一声がそれか。
脱げとは、また随分と無茶苦茶な要求をしてくるものだ。ああ馬鹿だから周りの生徒の視線がわからないのか。

困惑していたところ、後からこちらへ近づいたジェームズが笑顔で説明してくれた。

「別にそんな、変な意味じゃなくて、シリウスは君のローブを直してあげたいそうだよ」

「ローブを?」
「ああ!だから脱げ!早く!」

確かに、僕のローブは所々ほつれてボロボロだ。それも細かいものだし面倒だから放っておいたのだが。

「シリウスが」
「うん」
「僕のローブを?」
「ああ!」
「出来るの?」
「当たり前だろ」

シリウスは胸をはって頷くが、如何せん不安がつのる。

しかし悩むより先に、シリウスの手によってローブは強引に奪われた。

「おお、またやり甲斐のある痛みっぷりだな」
「ちょっとシリウス、寒いんだけど」
「なら後ろから俺を抱きしめてればいいだろ」
「成る程名案」

シリウスは子供体温で実に暖かい。冬は懐炉代わりに丁度良いくらいだ。

談話室のソファに座り、その上にシリウスを落ち着かせると作業の邪魔にならないよう腕を回す。

「んー、君は相変わらずあったかいねえ」
「そこで大人しく見守ってろよ」
「それじゃあ、お言葉に甘えて」

万が一失敗しても、まあいいだろう。魔法で何とかなる筈だ。

なんせ恋人が、自分のために苦手な裁縫を頑張ってくれるというのだから。





「……ねえジェームズ」

「何だいピーター」

「恥ずかしくないのかなあの二人」

「いいかい、ああいうのをバカップルって言うんだよ」

「僕、恋人ができてもああはなりたくないなあ」

「それはここにいる皆が思ってるよ」


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