※猫耳尻尾
「……何」
「ジェームズと、リーマスが……」
スニベルスにお見舞いしてやる筈だったのに!要するに嵌められたらしい、兄様は悔しそうに唸っている。どう言うべきか、まあ。あの二人、たまには良い事するじゃないか。
「似合ってますよ?きっとセブルス先輩よりも」
「いや、褒められても嬉しくねえし!」
兄様が不機嫌な原因を指差して、笑ってやる。きゃんきゃんと吠える兄様の頭には、真っ黒な猫の耳が鎮座していた。いや、生えていると言った方が正しいか。兄様が言うには、一日経てば元通りになるらしい。そして兄様は、こんな情けない格好で人目に出られるかと、わざわざ俺のところまでやってきた。俺だってこんな可愛い兄様、誰にも見せたくない。正しい判断だ。つまり俺は兄様を丸一日独占できるわけで。
「男に猫耳なんて気持ち悪いだけじゃねえか」
「わかってて先輩にやらせようとしたのだから兄様もよっぽどですね。でも、気持ち悪くないですよ。兄様凄く可愛い……ほら、」
おいで。
手招きすると、シーツに包まっていた兄様はそろりと俺の様子を隙間から窺う。辛抱強く待つ。それから用心深くこちらへ近づいてきた兄様を抱き寄せた。向かい合わせにして膝の上に座らせる。首元をなでると気持ち良さそうに目を閉じて喉を鳴らすのは不可抗力だろうか。
「やっぱり可愛い」
「んー……」
珍しく甘えたがりな兄様を満喫していたところで、ふとズボンの奇妙な膨らみに気がついた。もぞりと窮屈そうに動くそれ。
「兄様?これ、もしかして尻尾?」
「……っ!?」
……驚いた。まさかそんなサービスまで付いているとは。布越しに辿ると、兄様はぴくぴくと耳を震わせる。ああもして。沸き上がる悪戯心を止めるつもりはない。止められるものか。
「猫って、尻尾、弱いんですね」
「ゃ、違う……」
「……本当に?じゃあ、これ出してあげますよ。窮屈でしょう?」
ズボンを少しずり下げ、僅かに覗いた尻尾に指を絡める。兄様は小さく悲鳴をあげて俺にしがみついた。思わず、舌なめずり。欲望のまま、耳へと歯をたててみる。
「ひ!」
どうやら布に擦れる感覚が堪らないみたいだ。焦らすように、あくまでもゆっくりと、少しずつ。露になる長い尻尾。
「ぁ、あ、やっ……レギュ……やだ……」
はふはふと熱っぽい呼吸を繰り返しながら、兄様は力の抜けた体を完全に俺に預けた。解放された尻尾を根本から先端にかけて刺激してやる。兄様はまた肩を強張らせて、艶やかな息を吐き出した。
「ふぅうっ……!」
「敏感、」
「うー……」
「兄様?」
瞬間、視界が揺れる。真っ赤に頬を染めた兄様が薄い膜をはった綺麗な瞳で俺を見下ろしている。ああ押し倒されたのか。兄様はレギュ、と舌足らずな口調で俺を呼びながら、顔のあちこちに触れるだけのキスを降らせる。
「……発情期?」
だとすれば本当にやってくれる。相当だらし無い表情になっていることだろう、だって鼻血が出そうなのだ。例の二人に借りをつくるのは気に食わないが、今回ばかりは感謝しない筈がない。
「レギュ、体あつい……変だ……」
「でしょうねえ。安心してください、ちゃんと責任はとりますよ、兄様」
タイムリミットはまだまだ遠い。俺は兄様の唇に食らいついた。