大概の場面で、俺は権力を振りかざして強制的にXANXUSを抱いた。 だからといっては何だけれど、彼がこの行為に関してどう感じているのか、確認した事はまだ一度もない。
嫌なのかな。 それとも許してる?
返答によっては強姦になっちゃうよね―――シーツに包まるXANXUSを横目に、そんな事を考えながら衣服を整える。 日没も差し迫った時刻。カーテンを締め切った室内は、どんよりと重い空気に支配されている。
その日、昼間から珍しくサカった俺に、XANXUSは殺意の篭った強烈な視線を寄越してきた。気にせず押し倒す辺り、俺も随分図太くなったものだ。 「自分の立場分かってる?」と微笑むと、諦めたように抵抗を止める様がやけに可笑しかった。
薄布一枚隔てた所で彼は、きっといつもの凶悪な表情で俺を呪ってるんだろう。寝たふりなんて通じないよXANXUS。やたら賢いくせに、こういった部分で彼は馬鹿だ。
「ねぇ、XANXUS」 「………何だ」
軽く呼び掛ければ、案の定不機嫌そうな声が返ってくる。 完全に身なりを整え終えた俺は、彼の包まったシーツを当然のようにむしり取った。 途端現れる、火傷の後が残る裸体。別に恥ずかしがるでもなく、ただ億劫そうに起き上がった彼に俺は言った。
「今日はもういいよ。ヴァリアー本部に早く戻って」 「…はぁ? いつ戻るかは俺の決める事だ。お前には関係ないだろうが」
怪訝な顔で俺を凝視してくる。ああ、ホントに馬鹿だ。
「いいから言う通りにしなよ。ルッスーリアに伝えちゃったんだ、今日はボスを早めに帰すって」 「なんでルッスーリアに…」 「気付いてないの?」
彼が着ていたシャツを投げ渡す。ついでにジャケットとズボンも。洋服まみれになったXANXUSに、俺は得意の人の良さそうな微笑を浮かべてやった。
「ハッピーバースデーXANXUS。今夜はみんなに祝って貰いなよ」
「………」
言われた瞬間に、彼の眉間に深い皺が寄った。奇妙な形に歪んだ唇は、徐々に困惑気味にへの字に曲がっていく。 はは。堪らないよね、その顔!
フリーズしかけたXANXUSになんとか服を着せ、髪を整える。ちょっと待て、と言い募る唇に軽く口付けて黙らせると、さっさと部屋から追い出してやった。これでいい。 ルッスーリアの手料理と、それなりに乗り気なベルにマーモン、気合い入りまくりのレヴィ。 そしてスクアーロ。
俺は満足げに口の端を吊り上げた。 ハッピーバースデー俺の大事な“元10代目候補”、随分気の利いたプレゼントだろう?
俺の愛情が歪んでるとか歪んでないとかは余計なお世話。
end.
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