※未来捏造話。キャラ崩壊+甘々注意!もはやボスが別人です。
例えばあいつがいなかったら。
俺と出会う前に、どこかで野垂れ死んでいたとしたら。そもそも、この世に生まれてきていなかったとしたら。
S.スクアーロという因子が存在しない状態では、一体俺の人生はどう変わっていたのだろう?
* * * * *
とにかくがむしゃらに突き進んでいたあの頃と違って、今じゃ充分に考える余裕も持てるようになった。綱吉には「単に年取って丸くなっただけなんじゃないの?」と言われたが、ここは大人の渋みが出てきたという事にしておく。 それが良いか悪いかなんて分からないが、まぁ、とにかく、今の状態は嫌いじゃない。 あれから随分経つ。 多分俺は少しだけ変わった。そして、「お前の怒りに憧れた」と言ったあいつも。
「スクアーロ」 「お、XANXUS」
3月13日。ルッスーリアの用意した料理を運ぶその背中に声をかけた。長い銀髪を揺らして振り返ったそいつの目尻に、意識しなければ分からない程度の微かな小皺を見つけた瞬間、うっすらと「幸せ」という文字が頭に浮かんだ。我ながら安い幸せだと思う。だが、何事も高けりゃいいってもんじゃ無い。
「何だぁ、どうした?」
右手に持った盆の上には、いかにも誕生日用といった風体の馬鹿でかいケーキが乗っていた。自分のバースデーパーティーの手伝いを何の疑いもなくやってしまう単細胞ぶりに、思わず溜め息が出る。そして、思っていた事がつい口から零れた。
「XANXUS?」 「うん、Buon Compleanno」
誕生日おめでとう――たったそれだけの言葉だ。こんなちっぽけな台詞が何気なく口に出来るようになるまで、どうしてこんなに時間がかかったのだろう。
「おっ…おま」 「お互いオッサンになっちまったな」
ポカンと口を開けた顔が何とも間抜けだ。昔なら苛ついて殴り飛ばしていただろうそれに、何故だかひどく安心している自分が居る。 かつての怒りや絶望、その先にあった結末。そして今も。この男がいなければどう変わっていたかなど、想像もつかない。そんな仮定の未来には何の意味も無い。
「なるべくしてなったんだろうな」 「どういう意味だぁ…」
そう一人ごちる俺に、スクアーロはぐったりと項垂れたまま問いかけてきた。照れのせいでそうなっているのは明白で、知らず笑いが込み上げた。
(“出会ったのは運命だった”と言っておくのが一番座りがいい)
end.
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