※青益パラレル/設定:高校生
雨の降る放課後の教室で、二人は向かい合わせに座って共通の友人を待っている。 新聞部のカメラマンである彼は、いつも校内のあちこちを走り回っている。こちらから探すよりも、教室で待っていた方がよほど利口だと二人が気づいたのは、彼らが知り合って間もない頃だった。
「あのさぁ、青木君」
元々切れ長の目を更に細めて、二人の内の片方が言う。 青木と呼ばれた青年は、仏頂面のまま机の上から顔を上げた。
「きっと今日なら、青木君は嫌がるだろうな」 「何を嫌がるって?」 「僕が君の事を嫌いだと言ったら、きっとさ」 「…………ああ、エイプリルフール」
青木はたっぷり考え込んだ後、いかにもどうでも良いといった様子で溜め息を吐いた。
「益田君、そういうの信じるんだ?」
軽蔑の色を滲ませた青木の言葉に、向かいに座る青年――益田は、「僕ァくだらないものが大好きだからね」と言って苦笑した。
「楽しいじゃないか。青木君は嫌い?」 「まぁ、そうだね…」
しばらく黙った後、青木は少し前に乗り出して、ほんの軽く益田の唇に己のそれを重ねた。 ちゅ、とやけに可愛らしい音を立てて離れた唇を呆然と見つめる益田の頬が、みるみるうちに紅く染まっていく。
「嬉しいよ、すごくね」 「な、何が」
唐突に呟かれた言葉の意味が分からず、益田は動揺を隠せないまま問い返す。
「君が僕を嫌いだと言ったら――だろ? それに対する答えだよ。僕は嬉しい。君が好きだからね」
甘い言葉を囁きながらも、その目は明らかに相手の反応を楽しんでいる。とても本気とは思えなかった。
「ちょ、ええぇ…」
返す言葉も無く眉を下げた益田に、青木は珍しく声を上げて笑った。
「つくづく馬鹿だな益田君。好きかどうかも分からない相手に、そんな挑発をするからだよ」
end.
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