"不動!不動っ…" 涙の混ざった俺を呼ぶ声がする。 情けないな。いつもみたいにシャキッとしてくれよ。 "行くな…行かないでくれっ…!" お前が手を伸ばす。この手を取ればまたいつもの日々が戻る。 お前が隣にいて、喧嘩して笑って愛し合って…俺にとって最大の幸せ。 ただ俺にはお前の手を取ることが出来ない。 何故?そんなの決まっている。 お前と俺じゃ住む世界が違いすぎたんだ。 お前はいずれ鬼道財閥という大企業を背負う男だ。 俺なんかにかまってねぇでさっさといい女見つけて結婚して子供を授かってお前は幸せに暮らすんだ。 わかるだろ?俺じゃお前に必要な子孫は与えてやれないんだ。 "待て…待て不動っ…それでも俺は、お前が…不動のことが…っ" ザァーザァーと鳴る強い雨音でその後の言葉は聞き取れなかった。 俺の頬を伝い流れる冷たい水滴が涙なのか雨なのかわからなかった。 さようなら、鬼道有人。 俺は、お前のこと…… Back . |