「あれ…?豪炎寺??」


突然、後ろから聞こえた声に心臓が跳ね上がった。暇なのと、少しの会いたい気持ちが俺のその他の気持ちを上回った。なので家へと向かっていたのだが、その相手が、まさか後ろから声をかけてくるとは。何もないように装って振り返る。
振り返って、もう一度心臓が跳ね上がった。どうせ、こいつの事だ。サッカーか、ランニング等のトレーニングをしていただろうと予想をつけていた。だから、着ている服はジャージかユニフォームだと思っていたのだ。そしたら、だ。着ていたのは灰色のパーカーに黒のダウン。シルエットの分かるジーパン。チャームポイントでもあるバンダナは付けていない。いつもより何倍もかっこよく、大人びて見える格好をしていた。
俺はというと……スウェット。上下スウェット。もう少しマシな格好をすればよかった。と、初めて服装について後悔をした。


「どうした??」

「あ、いや、なんでも、ない」


気付くと顔を覗き込まれていて、思わず言葉がカタコトになってしまう。


「お前、どこに向かってたんだ??」

「お前の家に行こうとしていたんだ…。」


そっかー。と言うとコイツはいきなり俺の手を握った。


「俺も、お前に会いたかったんだ!!今更だけどさ初詣行こう!!」


そうとだけいうとグイグイと俺を引っ張って行く。俺の意見は聞かないのか。と心の中で苦笑しながらも、俺"も"お前に会いたかった。という言葉に頬が火照るのが分かる。前をズンズン進む円堂に気づかれなくて済むのがせめてもの救いだ。


「初詣したらさ、初サッカーやろうぜ!!」

「お前、年明けてからサッカーしてないのか」

「いや、したよ」

「だったら、初とは言わないんじゃないのか」


と、ピタリと足を止める。いきなり止まられて思わずぶつかるところだった。


「お前とするサッカーが俺の一番のサッカーだよ、豪炎寺。」


振り返りもせずに呟いた。俺の手を握る力を一層強めると一気に行くぞー!!と今度はいきなりに走り出す。ガクンと首が揺れて、おかげでハッと我に返る。コイツはいつもサラリと殺し文句を呟く。

置いて行かれないように懸命に走った。



(あれ、なんでお前、顔赤いんだ??)
(……走ったからな。)

【一番を授けよう】





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