今日はやけに担任の話が長かった。まあ、長かろうが短かろうがオレは聞いていないからどうでもいい。鬼道ちゃんが中盤からイライラしてるのを見てたから、そんなに長いとも思わなかった。
話が終わって、やっと部活だ、となったとき。ウチの部員の恐ろしさを身を持って知ってしまった。


「不動、行くぞ!!」

「てめぇ、鬼道さんが急いでんだよ!急げ!!」

「明王!!あんた遅れたらタダじゃ済まないわよ!」


もともと何も持って帰る物などないから帰る用意など必要ないのだが鞄を掴む暇さえ充分になかったようなもんだ。
半ば鬼道ちゃんに引っ張られるように部室へと駆け込む。
途中で鬼道ちゃんが帝国の制服の動きづらさに愚痴を漏らしていた。


「あ!!遅刻の佐久間先輩だ!!」


部室に着くなり嬉しそうな成神の声が飛んできた。その声で一斉に目線がオレらに飛んでくる。適当な挨拶が飛び交う中、佐久間が成神に詰め寄っていた。


「何でお前知ってんだ」

「源田先輩から」

「源田てめぇ!!」

「次郎!あんた早く着替えなさいよ!!」


帝国学園は着がえを置いておく部室とサッカーをするグラウンドが少々はなれている。そのため部室には一々施錠するのだがその施錠係が小鳥遊なのだ。男子の着替えはさっさと終わるように急かす小鳥遊は当たり前のようにオレらの着替えを見る(別に見られて困るもんなんてねぇんだが)。それから男子を追い出すと一人で中で着替える。男子もなかなか律儀な紳士(笑)が多くて皆で小鳥遊が出てくるのを待ってからグラウンドへと向かう。
問題はここからだ。
別に整列している訳ではない。適当に並んでグラウンドへと歩く。左右には、"帝国サッカーファンクラブ"と名乗る奴らがわんさかと並んでいる。


「鬼道さん来たわよ鬼道さん!!」

「鬼道さん!!鬼道さん!!手紙書いたんです!!」


一番人気は鬼道ちゃんだ。まあ、そうだろうがな。帝国サッカー部キャプテン、顔立ちは整ってるし(まあゴーグル着けてるが。)マントにドレッドと覚えやすい。それに人当たりはいいから。ほら、ラブレターもらってやがる。へっ。ご苦労なこった。
鬼道ちゃんはオレの恋人だ。なんてな。サッカー部のやつしか知らないからな。


「不動君!!不動君!!こっち向いて!!」

「不動君クッキー焼いたんです!!受け取って下さい!!!」


ちなみに、二番人気はオレだ。ま日本代表だったからな。二番っつっても佐久間と対して変わらないし、オレとしては好かれたくないんだが。周りのピーピーうるせぇ女子なんか興味ねぇ。


「佐久間くぅん!!佐久間君!!」

「佐久間君かっこいい!!」

「源田君!!源田君!!」

「キャー!!源田君こっち向いた!!」


佐久間はオレと同じようにどこも見ずに歩いている。源田は呼びかける子に手をふり笑顔で応えている。こいつら二人もデキてっからご苦労様だぜ。これもサッカー部内の秘密なんだがな。


「辺見君!!」

「咲山先輩!!タオルプレゼントです!!」

「弥谷君!!こっち向いて!!」

「洞面君!!キャー可愛い!!」

「日柄君!マスクとってぇ!!」

「成神君!!CDあげます!!」


帝国サッカーファンクラブは女子だけではない。女子共の道を通り抜けると、次の道は暑苦しい。


「小鳥遊ちゃーん!!」

「うぉー小鳥遊ちゃんだ!!」


小鳥遊のファンが、わさわさいる。小鳥遊は、しれっとオレと鬼道ちゃんの間に入って耳を塞いで歩く。小鳥遊はこういう女々しい男が大嫌いで、大声じゃ言えないような愚痴を部室で言い出した時にはさすがの鬼道ちゃんもたじろいでいた。


「やっとグラウンド着いた…」


小鳥遊がぐったりとベンチに腰掛けた。途中で貰ったプレゼントの数々をベンチ横に置く。

帝国サッカー部は練習開始までが地獄だ。








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