佐久間はその日、寝坊した。

起きたら時計が想像外な時刻を指していて寝起きの回らない頭は「あぁ、今日は休みか。」ともう一度睡眠を取ろうとした。

「ちげぇぇぇ!!!今日、月曜!!!!」

ベットから半ば落ちるように起きあがると慌てて洗面所へと走った。こういうときに限って先客がいるのだ。
がっつり化粧をしながら母親がこちらを向く。

「あんた、遅刻するわよ」

「分かってんなら起こせよ!!てか、変われよ!!邪魔!!」

ブチブチ煩い母親を左肩で隅に追いやる。水だけの洗顔と歯磨きを済ませて部屋に戻って更衣。こんな日は帝国の制服のややこしさが恨めしい。
勉強道具は全てロッカーに置いてある。筆箱と財布だけのぺったんこな鞄をひっつかんで家を飛び出した。

サッカーで鍛えた足で学校まで走る。佐久間の家からの距離では自転車が許可されない。お坊ちゃま校なので自転車通学なんてそうそういないのだが。



始業のチャイムギリギリで教室に飛び込む。ぜぇはぁと乱れた息のまま鬼道の席へと向かう。

「お、はようございっます…」

「佐久間、寝坊か?」

肩を落として苦笑しながら頷くと鬼道は口の端だけあげて笑った。

「髪といておけよ」

自慢の長髪は見るも無残な状態だった。








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