「あっ…あ、あぁ…んっあ…」


いつもは見下すような、馬鹿にするような、その深い緑の瞳は欲望でギラギラと光っている。そして、この瞳は誰のものでもない。俺だけの綺麗な宝石なのだ。
この口だってそうだ。いつもは人の感情を逆撫でする言葉を紡ぐ口は、快感で甘く高い声で鳴く。この口も俺だけのものだ。
不動の唇を唇で塞いで、舌に舌を絡める。


「んあっ…あっ…しつこ…っい、あ」

「……っ…」

「やっあ、ァ、きど、ちゃん…い、イく…」


不動の濡れた瞳を見ていると誰も知らない俺が顔を出す。
いつも人の上に立つコイツをなじりたい。
浅ましい欲望を我慢する理由など、いくら探しても見つからないのだから。不動も不動で案外そういった気質でもあるのではないのだろうか。俺が虐めてやると気持ちよさそうに後孔をキュウキュウと締めてくる。俺も男なのだからここまで締めあがると気持ちがいい。だからまた、虐めてしまう。
不動は分かってやってるのではないだろうか。
もちろん無意識なのだが。


「あ、あっ…ァう…イく、イくっ…」

「まだ我慢だろう」

「!?な、なにしてっ…んあっ」


不動のガチガチに固まっていた自身を根元からきつく握りしめた。もちろん、行き場を失いさまよう快感に、不動は困惑したイラつきの浮かぶ表情で俺を見つめたが容赦などはない。律動を開始すれば不動は弓なりに背中をしならせながら喘ぐ。


「んやっ、んあっ、は…きど…ちゃ」

「どうした」

「手ぇ、あっ…や…」


日頃の不動からは到底想像もつかない。甘えた声に、感度の上がった鼻にかかる声。いずれの声も欲望の解放を求める声だが可愛くて仕方がない。恋とは本当に恐ろしいものだ。


「イきたいのか」

「あっ…あぅぅ…」


恥ずかしいのか尾を引く語尾に俺自身も質量を増す。不動の可愛らしい声に答えるために発射をせき止めていた手を強く上下に動かす。もちろん、腰の動きが止むわけはない。


「あっああぁ…やっ、らめ…ぐ、ァ、ァ、ァ」

「イかせてやろう」

「んぅ、う、ァっ…イく…!イくイくイくぅぅぅ…!!!」


いきなり与えられた前と後ろからの快楽に甘く高い声で喘いでいた不動は最終的に半ば叫ぶような声をだして、俺の手を白濁に汚した。余裕のなかった俺もギチギチに締められて、搾られるように不動のなかで果てた。感度が上がっている不動にはそれすら快感のようで、ビクビクと肩を震わせていたが、それすらもなくなった。気を失ってしまったのだろう。いつものことだ。


全て片付けてから不動の隣に寝転んだ。規則正しい寝息をたてる不動を覗き込む。閉じられた瞳は睫の長さを強調していて綺麗だと毎回感心する。少しだけ開いた口は今すぐ吸い付きたくなるように魅惑的だった。
しかし不動が起きるまでの間なのだ。不動が起きてしまえば綺麗な瞳は人を馬鹿にする視線を放ち、魅惑的な口は人の感情を逆撫でするのだから。


「ん……ぅ…きど、ちゃ…」


ポツリと寝言を呟く不動。
情事中と情事後の素直な不動は、誰のものでもなく、俺のものなのだ。
満足して口の端を吊り上げて不動の隣で瞳を閉じた。





(誰にも渡さない、見せない)
(どこにも行かねえに決まってんだろ)

【Private Property】






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