そいつは、今日も来ていた。

俺が風呂から何から全て終わらせて帰ってくると、そいつは大抵の割合でここにいる。それも、我が物顔で。


「不動」


呼びかけてみるも何の反応もない。俯いてベットに腰掛けている。あぁ、寝ているのか。
そういえば、と、こいつの色白な肌を見つめながら思い出す。佐久間が気になると言っていたな。


「気になる…か。」


声に出して呟けばピクリ、と不動が身体を揺らした。起こしたか。まぁ、構わないだろうが。
不動はうなり声を上げながら首を傾げて関節をならした。ポキポキと乾いた音が部屋に響く。そのまま不動はうーんと伸びをすると、まだ目の覚めない瞳で俺の顔を凝視してくる。キラキラと深くで煌めく、奥ゆかしい緑の瞳が俺を捉えて離さない。


「何か、言わなかったか??」


薄い唇が動いて言葉を紡ぎ出す。姿を表した言葉は先程の俺の独り言に対する質問だった。聞こえていたのか。
不動に佐久間との会話を話し、それにより無意識のうちに口から出た言葉だと説明する。俺が話している間も、その射抜く瞳は俺を捉え続けていた。俺もその瞳から目が離せず、凝視し続けてしまう。まあ、ゴーグル越しで不動からは分からないだろうが。


「ふぅん。」


真剣な眼差しで聞いていた割には深みのない返事を返される。ベットに腰掛けていた不動の隣に座っていた俺を向いていた首は真っ正面に戻されて俺は不動の横顔を眺める。
気になる。気になるのは俺だ。佐久間よりも誰よりも、この俺が一番気になっている。不動を好きになった訳。そして不動も俺を受け入れ愛してくれている訳。


「不動」

「あ??」

「俺のこと、好きか?」

「だったら悪ぃか。」

「そんな訳があるか。」

「ハッ。なら愚問ってやつじゃねぇ?」


不動を見つめる俺と前を向く不動。
きっと、俺らの恋愛そのものだろう。
不動の顎に手をかけ優しくこちらを向かせる。されるがままの不動の首は柔らかく俺に任されている。
そう。これが俺らの恋愛だ。
また、あの瞳を正面から見つめる。ゆっくりと、間を楽しむように、ゆっくりと顔を近づけると不動は荒々しく俺のゴーグルを外した。不動の視線が俺の瞳を射抜いて、

唇が重なり合う。




(気にするほどの中身なんてない)
(言葉じゃ届かない範囲)

(瞳、写る、君)



【原因製造犯】










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