さて、と。

練習も終わり、後は風呂と晩飯、それから寝るだけだ。サッカーは好きだしずっとしていても飽きはしないが、一日中やってれば俺も人間だ。疲労が現れ出す。
グラウンドに散らばったボールを籠に入れていく。
トン、トン、とボールを蹴る音が聞こえて振り返ると視界にひらつく赤いマントが見えた。


「鬼道さん」


グラウンドの隅でリフティングをしていた鬼道さんはボールを見つめていた瞳をゴーグル越しに俺に向けた。


「佐久間か」

「まだ、練習続けるのか??」

「いや、そういうわけでは」


鬼道さんはリフティングしていたボールを高く蹴り上げると軽く俺にパスを出した。

「あぁ、そうだ、佐久間」


ボールを胸で受け止めると俺も鬼道さんへとボールを戻す。


「はい」

「お前最近、不動にちょっかい出してるだろう」

「あぁ…ちょっかいというか…」


鬼道さんからまたボールのパス。足の側面でボールを止める。
こうやって、鬼道さんとボールを蹴り合うのは俺の役目だ。あの、不動ではない。帝国の時から俺の役目だ。
そう思っていたが、二人の関係が変わってからはそうは妬かなくなった。ただ気になるようにはなったんだ。あの二人が惹かれ合う理由が。


「気になって」

「不動が、か?」

「あ、別に疚しい意味じゃなく、」


がらり、と鬼道さんの纏う空気が変わって慌てて訂正する。


「ほら、俺には源田がいるから」

「そうか」


同じ台詞を呟いても返ってくる返事が異なる。普通は似たもの同士が惹かれ合うのに二人はどこか違ってどこかが同じで。俺はそれが気になってしまう。


「佐久間、戻ろうか。」


ダン、とボールを地面と足で挟み込む鬼道さん。彼の背中に沈みかけた夕日が当たって表情はよく見えないけれど、どこか不敵な笑みを浮かべている気がした。


(こんなにも――)
(彼は気づいているだろうか)

【嫉妬回収犯】




*****

何が言いたかったんだ。




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